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俺は結局マックスの姿が見えなくなるまで笑い続けた。


だって、アイツ馬鹿すぎるだろ。

『ボクが本気出せば誰だって好きにならずにいられないもん』だって。
自信過剰すぎるだろ。
すっごいイケメンって訳でもないし、
身長だって小さいし、
すっげぇ意地悪なくせにどこからあんな自信が出てくるんだ。

本当、馬鹿だろ。
馬鹿すぎるだろ。
本当、馬鹿。
馬鹿、馬鹿、馬鹿、ば・・・。



「っふ…」

――馬鹿は俺だ。

俺は堪えきれずしゃがみ込む。

「うっ、うっ、う〜…」
こんな事で泣くなんて、馬鹿だろ。

顔を上げると、もうマックスの姿は全く見えず、
俺はアイツを笑顔で送れたことに、ほっとする。
アイツに泣くところを見られずに済んで、ほっとする。


俺はなんて馬鹿なんだろう。

マックスを膝枕した日から、
もしかしたらマックスは俺の事好きなのかもなんて勘違いして、
どうしようなんて困ったりなんかして本当に馬鹿だ。

必殺技の練習は影野の為だったのに、
二人きりで特訓するのが楽しくて、影野に申し訳なく思っていたなんて本当に馬鹿だ。


そして、こんな風に隠れて一人で泣くなんて本当に馬鹿だ。


アイツが俺に向けていたのは友情で。
俺が二人きりだと思っていた特訓も、実はいつだって三人で。
俺が浮かれていたことは全部俺の思い違いだった。


「マックスの馬鹿野郎。
本気なんか出さなくたって…」



俺はぼんやりと、
このまま泣いてたら二人が戻ってきた時、上手い言い訳ができなくて困るななんて思っていた。
でも中々涙は引いてくれず、俺はもう一度空を見上げる。

空はやっぱり雲ひとつ無くて、どこまでも綺麗な青が広がっていた。
さっき見た時は、嬉しくってこの喜びがどこまでも続けばいいって思っていたのに、
俺は今泣いていて、空だけが青いままだった。
そしたら何だかもっと泣けてきて、俺は泣きながらも少し笑ってしまう。

俺は腕で乱暴に顔を拭うと、水飲み場の方へと向かう。
頭からざぶざぶと水を被りながら、
これで少しは涙を誤魔化せるかななんて思ってる自分にまた笑いが込み上げてくる。


グランドのベンチに座って、二人を待つ。
やっと来た二人は、まだ完治していない影野を思い遣ってかゆっくりと歩いてくる。
それはいつものマックスからは信じられないぐらいゆっくりで、
俺と一緒の時にそんなペースで歩いたことなんて無かった。
マックスは心配そうに影野を見て、
影野はそんなマックスを少し照れた様に見つめる。

その二人の姿を見ただけで、胸がちくんと痛む。

俺はもう一度頭から水を被る為にベンチを立つ。

二人は、二人しか見ていないから、
俺が二人の姿を見てから頭から水を被ったなんてバレることは無かった。


 

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