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「えっ、…えぇっ?えっと…え、え、ぇ〜」

俺の頭は電池が切れてたみたいだ。
マックスの言葉の意味も、
俺の口から勝手に出る言葉も、
全部の意味がさっぱり分からない。

俺は全部の答えを探して、マックスから視線を逸らして色々な所を見る。
緑が眩しい土手にも、
きらきらと光を反射させる水面にも、
さっきゴールを決めたゴールポストにも、答えは無くて、
俺は困ってしまってもう一度マックスを見る。

「えっと〜…からかうの止めろよな。
冗談キツイぜ」
俺は無かったことにしたくて、そう言う。

でも俺の無理矢理作った笑顔を見ると、さっきの全然似合わない笑みをもう一度マックスが浮かべる。
それでやっとその表情は俺のせいなんだって気付く。
俺はそんな表情を浮かべるマックスを見ていたくなくて、
急いで顔を逸らす。

「気持ち悪い?」
マックスの声に顔を俯かせたまま、横に首を振る。


男同士だからとか、
気持ち悪いとか、
今の俺の混乱はそんなせいなんかじゃない。


「…なんで?
なんで俺にそんなこと言うんだよ。
そんなの、そんなの俺に関係ないじゃん」
俺は俯いたまま言う。

いつだって俺を振り回すマックスだけど、こんな風に振り回すなんて意地が悪すぎる。
俺を巻き込まなくても済む話なのに、なんでこんな風に言ったりするんだ。

俺は頭がごちゃごちゃで、
ただそれが全部マックスのさっきの言葉のせいだって事だけが理解できたから、
ふつふつとマックスに対して怒りが湧いてくる。


「半田には隠したくなかったから」

「だから、なんで!?」
マックスの答えは答えになってなくて、俺は思わず声が荒くなる。

「だってさ、これからも三人一緒なんだから、半田も知っとかないと困るでしょ?
急にボク等が甘い雰囲気になったら吃驚するもんね」

「はあ!?」
マックスの答えは俺が想像していたのとは全然違った。
俺は吃驚して顔を上げる。

そこにいたのはいつもと変わらないマックスで。
からかう様な顔で訳の分からないことを言うのもいつもと同じで、
さっきまでのマックスと違ってて、声もいつもの調子に戻ってる。

「だから〜、今日からボクと仁は付き合うことになるんだから、
半田の前でもいちゃいちゃするって言ってるの」

「はあ!?
お前今から告白するんだろ?
まだOKって決まってないじゃん」
俺は思わずいつもの様にツッコミを入れてしまう。
だってそれこそ男同士だし、上手くいかない可能性の方が普通は大きいだろ?
俺がそう言うと、マックスはふっと小さく鼻で笑う。

「ボクが断られるはず無いでしょ?
ボクが本気出せば誰だって好きにならずにいられないもん」

そう言って自信満々に笑う顔は、
さっきの顔なんかよりもずっと、ずーっと、
マックスにすっごく似合っていた。

「ぷっ」
気付いたら噴き出していた。

俺は腹を抱えて笑う。
マックスの言葉も、
マックスそのものって感じの自信満々なその顔も、
そしてこの状況も、
全部が全部面白かった。


「おまっ、おまっ、馬っ鹿だろ」
俺は笑いながら、声を震わせやっとの事で言う。
マックスは俺の言葉に少しだけムッとした顔で俺を睨む。
俺は今だ笑ったままで、その肩を叩く。

「ほら早く行けよ。
影野呼んでくるんだろ?」
俺が笑いをなんとか押さえ込んでそう言うと、
マックスはもう一度自身満々ににっと笑った。
俺を、俺だけを見て、にっと笑った。

「ありがと、半田」
マックスはその言葉だけを残して、影野の元に走っていった。

青空の下、振り返ることもせず、まっすぐ前だけを見て走っていく。
俺はその姿が見えなくなるまで、ずっとずっと笑い続けていた。


 

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