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シュート技の概要が決まると、俺達の意気は否応なしに盛り上がる。

ぐるぐる廻るのも、
手を握って二人で勢いよく廻ろうなんてマックスが言うから、恥ずかしいけどそうすることにした。
飛び上がってそのまま蹴ろうってことになったから、飛び蹴りみたいなシュート体勢に決まった。
二人でその体勢になるとVの字になるから、技の名前も決まった。


最初は勢いつけて手を握るから、怪我した腕が痛くてそれだけでも失敗してしまう。
くるくる廻りながらジャンプするのは難しくて、中々十分な高さにならなくて上手くいかない。
それにぐるぐる廻ってからキックするからタイミングを合わせるのが本当に難しい。

俺達は最後のタイミングを合わせるのに何日も何日も費やした。
そしてやっとタイミングが合う頃には、
俺の腕の痛みはほとんどなくなっていた。
皆も大分良くなっていて、影野でさえもう歩くぐらいなら大丈夫になっていた。


やっとタイミングも合ってきて、俺達は練習場所を河川敷に変えた。
まだまだ復興工事中の学校じゃなく、
実際にサッカー場でゴールに向かってシュート練習することになった。

実際にゴールに向かって撃ってみると、威力は十分あったものの、物の見事にゴールポストから外れていく。
でも何回も撃つとどんどんゴールポストにボールが近付いていく。


「「レボリューションV」」

それは何回目のシュートだっただろうか。
綺麗にVの字を描いたシュートはすごい勢いでゴールネットを揺らした。

「入った…?」

「やっ、た・・・」

「やったああぁぁ!!」

俺達は無我夢中で抱き合う。
ついにやった。
俺達はついに俺達だけのシュートを完成させた。
それは何物にも変えられない達成感だった。

俺達は抱き合ってぴょんぴょんジャンプした。
やったなってお互いに言いながら、どんっ、どんって体をぶつけ合う。
嬉しくって思いっきりぶつかって、二人で転んで笑いあう。
これ以上ないってぐらい嬉しかった。
寝っころがったまま、二人でいつまでも笑って、
笑いが治まっても、寝転んだまま空を見た。
雲一つ無い、どこまでも青い、綺麗な空で、
俺はこの空みたいに、どこまでもこの喜びが続けばいいと、
思いながら空をただ眺めていた。



「ねえ」
空を見ていると、マックスの方から声が聞こえた。

「ん〜?」
上半身を起こしてみると、マックスも上半身を起こして肩膝だけ立てて座っている。

「仁、…呼んで来てもいい?」
俺の方を見ないでマックスが片膝を抱えて言う。

「おう!あいつにも俺達の必殺技見せてやろうぜ」
俺が立ち上がって、そう言っても何も言わない。

「?
どうしたんだよ、早く呼びに行こうぜ」
俺がマックスの肩に手を置いてそう言うと、マックスがやっと俺の方に顔を向ける。

その顔は全然笑ってなくて、
怖いくらい真面目な顔で、
俺の笑顔は忽ち凍りついてしまう。

「ごめん、ボク一人で行きたいんだ」
立ち上がって、俺の前に立つ。

どきっとした。

目の前にいるマックスは俺と一緒にいる時のマックスと雰囲気が違っていて、
なんだか知らない人みたいだった。

「な、なんでだよ?」
俺は変な胸騒ぎがして、ぎゅっと自分のTシャツの前を握る。

俺の怪訝そうな態度を見て、マックスが少しだけ笑みを浮かべる。
困ったような自嘲するような、
そんなマックスに全然似合わない笑み。

そうして、マックスはゆっくりと口を開く。
時間がやけに遅く感じる。


「実は前から決めてたんだ。
…技が完成したら仁に告白するって」


 

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