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「やっぱさ〜、シュート技の必殺技欲しいよね。
こう円堂にも中々止められないぐらいのシュートがさ」
マックスがリフティングしながら、そう言う。
そのリフティングはもう俺より全然上手くて、ボールを落とす気配さえない。

「そうだな〜、やっぱシュート技あると強くなった!って実感湧くもんな」
俺は同じようにしていたリフティングの、失敗して落としたボールを拾いながら言う。

「なんか無いかなぁ。
こうキック力に劣るボクでも凄いパワーが出るシュート技」
頭で何回もぽんぽんとヘディングしながら眉を寄せて言う。

「だから俺が何回も言ってるだろ?
連携しかないって!」

「え〜、だって半田と連携ってことでしょ?
半田だってボクとどっこいのキック力しか無いじゃん」
俺がボールを抱えて仁王立ちで言うと、
ヘディングしていたボールを一度地面にバウンドさせると、跳ね返ったボールを思いっきりシュートしてマックスが言う。
撃ったシュートが瓦礫にぶつかり、勢いよく跳ね返り戻ってくる。

「だから二人一遍に撃つんだよ。
そしたら少しは威力が増すだろ?」

「ん〜、それだけじゃ不十分なんだよね。
もっとこうさ、威力は無くてもGKが取りにくいシュートとか撃てないかな?
野球で言うとストレートじゃなくてカーブとかナックルとかシュートみたいな変化球がいいんだよね。
ボクはキック力は豪炎寺に勝てる気がしないけど、
テクニックならいい勝負すると思うんだよね」
マックスはそう言うと、そこら辺に落ちている棒を拾ってしゃがみ込む。
地面に苛立ったように棒を何回も刺している。

「じゃあさ、こういうのはどうだ?
二人でくるくる廻ってからシュートすんの。
そしたらいつ撃ってくるか分からなくてGKも反応できないんじゃないか?」
俺もマックスの前にしゃがみ込む。

「それって二人でぐるぐる廻るの?
デスゾーンみたく?」

「そうそう。
いいじゃん、デスゾーン強いじゃん」
俺は何気なく言った意見がまあまあ的を射た意見だったみたいで少し得意げになる。

「だったらデスゾーンより絶対弱いじゃん。
あっちは三人、こっちは二人だもん。
…それだけじゃ駄目なんだよ。
もう一捻りしないと」
マックスは持っていた棒をぼきっと半分に折ってしまう。

実際に練習を続けているだけである程度満足してしまった俺と違って、
マックスはいつもどこか焦ったように練習していた。
特にいつまで経っても決まらない必殺技については、マックスらしくなく余裕の無い様子を俺に隠そうともしなかった。
自信家のマックスが自分の欠点について堂々と口にするのも珍しくなかった。

苛立つマックスには悪いけど、
俺はそれが俺だけには本音で話してくれてるみたいで少し嬉しかった。
マックスが飾らない自分を俺にだけ見せてくれてるみたいで少し嬉しかった。

・・・ううん、大分嬉しかった。


「じゃあじゃあ、こう角度を変えてみるってのは?
地面を這うようなシュートより、
上からのシュートの方が高低差があってGKがキャッチするの難しそうじゃん」
俺が取り成すようにそう言うと、マックスも苛立つように棒を刺していた動きを止める。

「撃つタイミングが分からない上に、上の角度からのシュートか。
いいじゃん、それ!
半田にしては良いこと思いついたじゃん」
そう言ってマックスが嬉しそうに笑って俺の頭をぐしゃぐしゃと掻き回す。

「半田にしてはって余計だろ!」
髪をぐしゃぐしゃにされて、
その上『半田にしては』なんて言われたのに、俺は何故だか口が緩んでしまう。
口では怒ってみたって、技が完成に近付いたのが嬉しい。

…マックスに褒められたのが嬉しい。


「も〜」
俺は口では怒った振りしながら、自然と込み上げる笑みを抑えきれず、
緩む口を腕で隠しながら、乱れた髪を整えた。


 

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