15



最初はなんだか変に意識してしまって、落ち着かない膝枕だったけど、
十分もすると、今度は違った意味で落ち着かなくなってくる。
・・・ぶっちゃけ、足が痺れた。

さっきマックスも降ろしていいって言ってたし、遠慮なく芝生にマックスを降ろすことにする。
うつ伏せだから降ろすのも一苦労だ。
そーっとそーっとマックスの頭をずらす。
そっと地面に降ろしてもマックスの寝息は止むことは無い。
こりゃ、相当眠かったんだな。

うつ伏せで、顔を横に向けて、
くぅくぅと寝息をたてて寝るマックスはなんだかあどけなくて、つい口の端が上がってしまう。

外で寝ているマックスの為に何か掛ける物でも持ってくるかと、立ち上がろうとした瞬間、
俺は産まれたての小鹿みたいに足がぐらんぐらんしてままならない。
極度の足の痺れで、思わず地面にへたり込んでしまう。
咄嗟のことで、マックスの上に倒れこまないようにするのがやっとだった俺は、
マックスのすぐ脇にぺたんと座りこんだ。
その気配を感じたのか、マックスがもぞもぞと動く。

やべぇ、起こしたかな?と思っていると、
落ち着かないように体勢を変えているマックスの手が俺の手に当たった。
すると、うつ伏せから横向きになって眉を寄せて寝ていたマックスが俺の手を握って、にこっと笑った。


手を握られたことよりも、
手を握った瞬間に嬉しそうに笑ったマックスに、
・・・どきっとした。


俺の手を確かめるように何度も握り返しては、にこにこしているマックス。
それはまるで起きているみたいで、マックスにからかわれることが日常茶飯事になっている俺は、
忽ちマックスが寝た振りして、俺がドキドキしているのを面白がっているような気がしてくる。

「マックス!」
それが正解な気がして、マックスに怒鳴る。

「マックス?」
割と大きな声を出したのに反応が無いマックスの顔を下から伺う。

「…マックス」
顔を近づけてみると、マックスが本当に寝ているのは明らかで、
俺はまた一気に顔が熱くなる。


だって、だって、こんなの反則だろ・・・。

いくら素直じゃないマックスだって、寝ている時は流石にそんなはずもなく。
本当に寝ているんだとしたら、これがマックスの本心ってことで。


――本当は俺の手が握れて「嬉しい」なんて反則だろ・・・。


俺は堪らなくなって、天を仰いで溜息をつく。

もう、さっきからコイツなんなんだよ。

いきなり抱きついてきたりとか、
ずっと傍にいてとか言ってきたりとか、
挙句に、こんな風に手を握って笑うとか、
…それが全部冗談じゃなく本気とか。

本当、どんな反応していいか分かんないじゃんか。


俺は握られた手をちらりと見る。
それは強いぐらいの力でぎゅっと握られてて、簡単には解けそうにない。
その力強さが、マックスを俺を求める強さな気がして、慌ててそこから目を逸らす。
どうしていいか分からなくて、
もう一度周囲に誰もいないかきょろきょろと確認する。
勿論周りには手を握り合ってる俺達を見る人なんて誰もいなくて、少し安心するけど、
反面ここには俺とマックスの二人だけなんだって思うと、さらに頭が真っ白になっていく。

どうしよう、どうしよう、どうしよう。
こんなところ、誰かに見られたらどうしよう。
もし万が一、いや本当にある訳ないんだけど、でも万が一、
…マックスが俺のこと好きだったらどうしよう。
それに、それに、もっとある訳ないし、仮定の上のさらに仮定だから、絶対ある訳ないんだけど、
…俺がそれに応えちゃったらどうしよう。

俺は握られた手にドキドキしながら、
次々浮かんでくる可能性を打ち消すのに必死だった。
だってそれらの可能性は、必死にならないと打ち消せないと、
なんとなく心のどこかで分かっていたから。



この時の俺は、
マックスが感じていた悩みとか迷いとか恐怖とか、
それをぶつけられるのが友達の俺しかいないこととか、
全然、全然分かってなかった。
俺の温かい手を、
昨日の夜一晩中握っていた冷たい手と、
寝ていたから混同したこととか、
全然、全然知らなかった。


だからこんな馬鹿な勘違いをした。
馬鹿な馬鹿な、ありえない程馬鹿な勘違い。


 

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