2



不真面目サッカー部員半田真一のサッカーライフはこの一年で大きく変貌を遂げた。
きっかけは豪炎寺。
んで帝国がやって来て、
部員が次々増えて大会にも参加出来るようになったし、
ドーピングした変な奴らにも勝って優勝までした。
その後は自称宇宙人までやって来て、
まあ要するにこの一年で出会ったヤツは全部が全部サッカーの上手いヤツばっかりだった。

豪炎寺の登場にははっきり言って胸が躍ったし、
鬼道の雰囲気にははっきり言って気圧された。
アフロディなんか同じ人間かって疑ったぐらいだし、
エイリアの奴らなんかは本当に宇宙人だって信じてたぐらい凄かった。

でも、実は俺が一番憧れて、目を奪われたのはそいつらなんかじゃない。


一之瀬一哉。


『フィールドの魔術師』って呼ばれてる、
俺のポジションを華麗に奪っていった奴だった。



「ねえ、半田っていつも俺のこと見てるよね?
もしかして俺のこと好きなの?」

それはたまたま俺んちの親が留守で、帰っても昼飯なんて無いっていう部活帰りの土曜日に立ち寄った雷雷軒に、
一之瀬と土門がいたっていう偶然が合わさった日のこと。
三人で奥のテーブル席で監督に特別割引してもらってる特製ラーメンを食べている時に、一之瀬が何の脈絡もなく俺にこう言い放った。

「ぼふぅ!」

「えー、何、何?
うっそ、半田ってホモなの?」

当然、ラーメンを噴き出したのが俺で、
楽しそうに身を乗り出したのが土門ね。
俺は突然な一之瀬の戯言に驚いて、ラーメンが変なところに入って咳が止まらない。
俺は咳き込んでいてツッコミが入らないから、二人の頭のヤバイ妄想はさらに加速していく。


「最近、よく熱い視線を感じるんだ。
それで振り返るとそこには必ず半田がいて、
ああこれは初心な半田は俺の爽やかな魅力にメロメロなんだなって思ってさ」

「ゴホッ、ゴホッ、ゴホォッ」
うん、一之瀬が爽やかだなんて俺、一回も思ったことないぞ。
寧ろ爽やかブリッコな腹黒さんだろうが!

「そっかぁ。
そう言われてみれば半田ってベタなタイプに弱そうだもんな。
一之瀬なんて一昔前の少女マンガに出てきそうなキャラしてるし、まさにどんぴしゃ?」

「ゴホッ、ウッ、ゴーッホ、ゴホ」
うん、俺って確かにベタなタイプに弱いけど、それってあくまで対象は女の子に限定されてるから!
どんぴしゃな訳あるかああ。

「ちょっと、土門。一昔前ってなんだよ。
俺は今でもモテキャラでしょ?」

「えー?今は俺のがモテキャラっしょ?
俺みたいな少しチャラいけど本当はアツイってのがさ。
なんだっけ、ギャップ萌え?」

「ぷっ、なんだよそれぇ?土門、適当に言ってるだろ」

「あっ、バレた?」
あはははと一之瀬が笑えば、土門も少しおどけて笑い出す。

って、おいぃぃ!
なに、何気に『俺=ホモ説』を俺が咳き込んでる間に確定させてんだよ!?
つーかお前達がモテるかどうかなんて今は知ったこっちゃないってーの!!

咳き込みながら心の中でどんなに突っ込んでも埒が明かないって気付いた俺は、馬鹿な二人の目を覚ます為に声を出す。


「ゴホッ、おいっ、ゴホゴホ、俺は、ホモじゃねーぞ!ゴホッゴホ…」
俺の咳交じりの必死な声に、笑い合っていた二人はきょとんとして俺を見る。

「じゃあ、なんでいっつも俺のこと見てんの?」

うっ!そ、それは…。

咄嗟に否定したものの、まさか切り返されると思ってなかった俺は言葉に詰まってしまう。

「なあ、なんで?」

一之瀬の本当に疑問って視線が突き刺さる。

「そ、それは…」

「それは?」

うう、なんでこんなに追求してくんだよぉ…。

俺はぐさぐさ刺さる二人の視線に顔が熱くなるのを感じる。
もう一之瀬とも土門とも目が合わせられない。


「…だって、しょうがないだろ。
目に入るとつい見ちゃうんだもん。一之瀬のこと」
俺は格好悪いって自覚しつつ、仕方なく理由を口にした。
もうっ、こんな馬鹿丸出しの理由なんて言いたくなかったのに!



 

prev next




第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -