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「というわけで、第二回菅田をぎゃふんと言わす大作戦を決行します」
ぼふっと大きな紙袋を置いてマックスが言い出す。

「ちょっ!
待てーぃ、何が『というわけで』だ!
決定事項として話すの止めろ!」

「え?決定したじゃん。今。ボクの中で。
ね、仁?」

俺の至極真っ当のツッコミをさらりとかわして影野に言う。
いきなりふられた影野は困ったように笑う。
笑うしかないって反応だった。

「お前なあ、この前の作戦だって大失敗だったじゃないか!
お前のせいで関係ない俺達までどんだけ怒られたか忘れてないだろうなあ!?」
俺はマックスの胸倉を掴んで詰め寄る。


この前の作戦…『実は四つ子!?宍戸がいっぱい大作戦』は、
退屈が大っ嫌いなマックスと目立つって言葉に弱い影野によって俺の大反対を無視して決行された。
アフロの鬘を被って午後の授業に出た俺達は速攻菅田に怒られた。
まあここまでは一応、想定の範囲内だった。
でも…。


「お前が考えた言い訳、まんまと菅田先生のトラウマスイッチだったじゃねえか!
あれ以来、何もしてないのにやけにマークされてんだぞ!
もう絶対、お前の作戦なんかやるかっつーの!!」

そう。
俺達がした言い訳
『バスに爆弾が仕掛けられていて、こんな髪型になってしまいました。だから俺達が悪いんじゃありません。全部影山のせいなんです』
は、伝説のイナズマイレブンの一員だった菅田先生のトラウマをまんまと刺激してしまった。
その時はそんなこと全然知らなかった俺達は、本当に影山のせいでバスが事故ったことのある菅田先生に、そんな言い訳をしてしまった。
当然、菅田先生は烈火のごとく怒った。
そりゃそうだ、現サッカー部員の俺達がそんな冗談を言ったんだから、怒るに決まってる。
もうあんなのは二度とごめんだった。

「今度は大丈夫!!
前回のような失敗は二度と繰り返さないから」
でも、俺の必死の反対はマックスには通じない。
まあ、そもそも通じた例が無いんだけど。

「今度はどんな作戦なの?」
俺の反対をよそに、影野が呑気な声で訊ねる。

あ〜、馬鹿!そんなこと訊いちゃったら絶対押し切られるに決まってるのに。

はっきり言って、俺と影野ではマックスの言うことに結局いつも逆らえない。
いくら文句を言っても、(主に言うのは俺だけど)結局最後は渋々ながらもマックスの言うとおりになってしまう。
だから、本当に嫌なら、最初からマックスの言うことを聞かないで逃げるしかない。
情けないけど、それしかない。

俺は影野の言葉を聞いた瞬間に、慌ててマックスを掴んでいた手を離す。
影野に「逃げるぞ」って目配せをして、急いで逃げの体勢に入る。
でも、俺の目配せは影野に通じず、しかもマックスに首根っこを掴まれてしまう。

「今回はシンプルだよ。
名付けて『なんであんな人がここに!?帽子じゃないよマスクだよ大作戦!!』」
そう言って、影野の頭に被せたのは、財前総理のマスクだった。


「絶対やらない!!」
俺は取り合えず反対表明をする。
でも、当たり前のように無視され、マックスの話が進んでいく。

「これなら仁の目だって絶対見えないから安心でしょ。
それに今回は言い訳もばっちり!
『これは帽子じゃありません、マスクです』
でオールオッケー」
イェーイとポーズを決めるマックスの頭を叩く。

「どこがオッケーなんだ、どこが!」

「オッケーじゃん。
だって、今の時期、教室にマスクしてる奴なんていっぱいいるよ?
少しぐらいプリチーなマスクの子がいても怒られるのは筋違いでしょ?」

「それもそうだね」
マックスの言葉に財前総理が頷く。

「んな訳あるか!
これをあのマスクと同じって言い張るには無理があるだろ!!
これ、ウィルスも花粉も防げないから!!」

「でも、急な地震の時に防災頭巾の代わりにはなるかも。
あとちょっと暖かい」

「うん、結構暖かいよ、これ」
マックスの言葉に財前総理が同意する。
いい加減脱げよ、それ…。

「それ意味ないから。
つーか、そもそも俺達を巻き込むな!
やるならお前一人でやれよ。
お前一人でやる分には止めないから」

「え〜、一人だと日米首脳会談になんないじゃん。
絶対無理、超サムい」
マックスがウケ狙いだって本音が透けてみえることを言いながら、袋から今度はケイン大統領のマスクを取り出す。

「で、半田はこれね」
そう言って袋から取り出されたのは、
スターウォーズのヨーダのマスクだった…。


 

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