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「という訳で、これから菅田をぎゃふんと言わせるから」

暫くチュッパを満喫していたマックスがちゅぽっと口からチュッパを出してそんなことを言い出した。

「はあ!?」
まだ機嫌の直らない俺は、突然の宣言に聞き返す声も尖る。

「どんな変な格好でも、帽子じゃなければいいんでしょ?
だからこれから『実は四つ子!?宍戸がいっぱい大作戦』を決行するから」
そう言うと自分のバックを漁りだす。

「おーぉー、なんでも良いから俺の関係ない所で勝手にやれよ」
俺は冷たい声で言い返す。
もうマックスと菅田がどんな攻防を繰り広げようがどうでも良い気分だった。

「四つ子…?」
でも、訝しげな影野の声で俺もはっとする。

「も、もしかして、それ俺達も数に入ってる…?」

俺は嫌な予感がしつつも、恐る恐る訊ねる。
できれば俺のこの嫌な予感は外れて欲しい。
でも、マックスはさっきまでの不機嫌さとはうって変わって笑顔で振り向く。


「期待しているぞ!半田工作員!!」
そう言いながら俺の頭に被せたのは、宍戸みたいなアフロの鬘だった…。



「ふざけんな!そんなの絶対怒られるじゃんか!!」
俺は鬘を外し捨てながら怒る。

「大丈夫だって。宍戸怒られてないじゃん」

「宍戸のは自前だろ!?これ鬘じゃん!」

「バスが爆発しましたって言えば平気だって。
冬海先生がバスに爆弾仕掛けましたって」

「平気な訳あるかあぁ!」
俺の必死の抵抗を無視して、マックスは自分のバックを漁り続ける。

「つーかお前、なんでそんなの持ってるんだよ!?」

ちゃんと三つ出てきたアフロの鬘に、俺はがっくりして訊ねる。
今日菅田先生に怒られたっていうのに、なんでこんなの用意してるんだ。
まるで前から用意していたような準備の良さに怒りを通り越して、気が抜けてしまう。
ある意味感心してそう言うと、当たり前の顔でマックスが答える。

「面白いかな〜っと思って、部室のロッカーに入れといたから」

ソウデスカ・・・。

遅かれ早かれ、何かしらの被害に遭う予定だったことを知り、俺は怒る気力もなくなる。
マックスが一人だけ部室のロッカーを三つも使っている理由も何となく分かった。

今度、マックスのロッカーの風紀検査してやる。
俺がそう心に決めていると、マックスが楽しそうに影野に話しかける。

「ねえ仁。これ三人で被ったら、絶対目立つって!
だから一緒にやろうよ」

「え」

影野は「目立てる」って言葉に心が惹かれたようで、少し嬉しそうにアフロに手を出す。
鬘を上下左右して暫く眺めた後、少し逡巡して言う。

「でも、これだと瞳が隠せないから…」
そう言うと、マックスに鬘を押し返す。

「大丈夫だって!宍戸だって目隠れてるしさ」

「でも…」
そんな言い合いをしながら鬘を押し合う。

「じゃあ、瞳が見えなければいいよね!?
今、鏡持ってくるから待ってて!」
そう言うとマックスは影野の返事も聞かず、鏡を取りに走っていってしまう。
結局俺の意向は完全無視らしい。


 

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