16*



「半田…」
一之瀬は、泣きそうな顔でなんとか笑った俺を見つめた。

はっきり言うと、余り見つめないで欲しい。


・・・一之瀬の顔を見るだけで泣いてしまいそうだから。


泣いたら、これが最後になるって認めるみたいで、俺はどうしても泣きたくない。
俺は泣いてしまう前に一之瀬の顔から自分の顔を隠す為、一之瀬に抱きつく。


「一之瀬、最後までシて。
俺、お前とならなんだって平気だから」
抱きついて一之瀬の耳元で囁く。

俺の言葉で、一之瀬の体がびくりと揺れる。
ついでに下腹部に当たってる一之瀬の欲望の証も。
それが嬉しくって、そのまま一之瀬の耳を甘噛みする。

「一之瀬ぇ」
「早く続きしよ?」って意味の一之瀬の名前。
こんな風に誘うことが自分にも出来るなんて初めて知った。


俺が名前を呼ぶと、またさっきの場所に一之瀬の指が伸びる。

「んんっ」
一之瀬の指が、俺の穴の周りを皺を確認する様に動く。
俺は一之瀬に抱きついたままだから、俺の吐息が一之瀬の耳に当たってしまう。
俺が一之瀬の指に感じて息を洩らすと、それがそのまま一之瀬の興奮に繋がる。
そうすると一之瀬の指がもっと俺を感じさせようって動くから、
俺はまた堪え切れないで今度は声が漏れてしまう。

「いちのせぇ…いいよぉ」
また熱くなってきて、自分から一之瀬の剛直に自分の少しだけ芯を持ち始めたソコを押し付ける。
一之瀬の先は少し濡れていて、俺のを押し付けるとくちゅって音がする。

「入れるよ」
その音が一之瀬を煽ったのか、
後ろを慣らすように触れていた一之瀬の指が、俺の中に入ってくる。
さっき俺が出した白濁でどろどろの一之瀬の指はぬるりと抵抗なく入ってくる。

「はぁうんっ」
興奮しちゃってる俺は、初めて挿入れられてるってのに、
難なく入ってきたそれにほとんど異物感も感じてなかった。
それどころか、俺の中に指を入れてるだけで息を荒げている一之瀬が嬉しくって、
一之瀬の指をきゅうきゅう締め上げた。

「あっ、あっ、…いちのせっ、いちのせぇ」
一之瀬の指は、入り口をいくらきゅっと締めつけても中でかき混ぜる様に動き回る。
しかも時折自分でもびっくりするぐらい気持ちいい場所があって、
もう前も一之瀬のと同じくらい硬くてとろりと先走りを零している。
硬いのに自分のを腰を動かしてごりごりと擦り合わせると、二人の先走りが反動で少しずつ溢れて滴る。
それがにちゃにちゃと二本を絡ませていて、
堪らなく気持ちいい。


「挿入れて、いい?」
耳元で切羽詰った一之瀬の声がする。
体を密着させてるから見えないけど、絶対お腹の周りは俺達の先走りでぐちゃぐちゃになってるはず。
もう我慢出来ないって気持ち、よく分かる。

「うんっ、俺、も、…もうっ」
俺が同じようなギリギリの声で答えると、後ろからすぽっと指が抜かれる。
それはいっそ潔い程、勢い良く抜かれてしまい、
俺は喪失感に体を震わせた。

「いちのせぇ…」
解れた其処は埋めるモノを求めてヒクヒクと蠢いているのが自分でも分かる。
「早くちょうだい」って意味のオネダリの声に、一之瀬が俺を抱き上げ、部室のテーブルに横たわらせる。
そうすると、横になった俺の秘所と一之瀬の欲望が丁度同じような高さになる。


「挿入るよ」
ぐっと宛がわれたのは、指よりもすっごく太くて、情けないけど急に怖くなってドキっとする。
だってさ汚い話だけど、そんな太いの出したことも無いのに、俺の中に入る訳が無い。

でも、ここまで来て怖いなんて言えない。
俺を気遣って止めようって言ってくれた一之瀬にそんなこと今更言えない。
そんな弱音吐いたりなんかして、本当に一之瀬が止めてしまったら嫌だ。


「うん、きて」
俺は出来るだけ平気な顔で一之瀬の顔を見つめ返す。

ぐぐっと入り口に更に押し当てられる。
俺はその瞬間が怖くて目を瞑ってしまう。
一之瀬の肩を掴んでいた手にもぎゅっと力が入る。


でも、いつまで経っても入り口に宛がわれたモノは俺の中に入ってはこなかった。


「あ、あれ?」
ぐぐっと入り口を圧迫したまま、一之瀬が戸惑った声を上げる。

「どうした?」
俺は目を開けて、一之瀬を見上げる。
一之瀬は焦った顔で俺達の腰の辺りを見ていた。

「は、入らない」
眉を下げた一之瀬の顔は本当に困っていて、知識の無い俺は少しだけど疑ってしまう。

「本当に其処に入るんだよな?」

「そのはずだけど…」
初めてって言っていた一之瀬は俺の疑問に言葉を濁す。

何回かチャレンジしても入らないのに焦った一之瀬は、
自分の剛直に手を添えて、ぐぐっと更に俺に押し当てる。
途端に俺の秘部に裂けるような痛みが走る。

「ッ…たぁっ!」
俺は急な痛みに思わず腰が引けてしまう。
入りそうだった一之瀬のモノも、呆気なく抜けてしまう。

「あっ!…ゴメン」

「いや、こっちこそゴメン」
咄嗟とはいえ、腰を引いてしまった俺が謝ると一之瀬も気まずそうに謝ってくれる。


これがこれから幾度と続く、俺達の一度目の失敗だった。


 

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