15*



「一之瀬…」
俺は一之瀬に抱きついたまま、一之瀬の名前を呼んだ。
今の「一之瀬」の意味は…。
・・・うん、内緒。
恥ずかしいから一之瀬本人にだって内緒だ。


名前を呼ぶと、一之瀬がまたキスしてくる。
今のは「キスして」って意味じゃ無かったんだけど、
それでも俺の「好き」ってサインに応えてくれたみたいで嬉しい。

キスすると体が密着して下腹部に硬いのが当たる。
そう言えば自分はすっきりしちゃったけど、一之瀬はまだだった。

俺は一之瀬のそこに手を延ばす。
一之瀬にも気持ち良くなってほしいし、俺だって一之瀬の感じてるエッチぃとこ見たい。

でも、一之瀬は俺の手をそこに届く前に握ってしまう。


「一之瀬?」
やんわりとした拒絶に、俺は一之瀬の顔を見る。

「俺はいいよ。半田の中でイキたいから」

俺の、…中?

「えー…っと?」
意味が分からなくて戸惑う俺に一之瀬がまた切ないって顔して言う。

「でも、半田が最後までシたくないなら無理しなくていい。
俺は半田が受け入れてくれただけで嬉しかったから」

切ないって顔は、
俺のことを想ってるって事なのに、悲しいって顔に似てて、嬉しいのにどこか寂しい。
俺は今、目の前にいるのに、一之瀬にそんな顔させたくない。
でも、一之瀬の言ってることがよく分からなくてどうしていいか分からない。

「あのさっ!
…中ってどういう意味?
最後までって、男同士って二人して出して終わりじゃないの?」

俺は一之瀬に性の事について自分の無知さを知られるのが恥ずかしかったけど、
それ以上に一之瀬を悲しませたくなくて素直に訊ねる。
俺が恥ずかしそうにそう言うと、一之瀬は少しほっとした様に寄っていた眉を元の位置に戻す。
うん、恥ずかしかったけど今の一之瀬の顔で帳消しになった気がする。


「今は野球で言うとスリーベースってとこかな。
野球はしているけど、まだホームインは出来てない。
体を繋げないと最後までシたことにはならない」

「繋げるたって、どこと?」
俺が訊ねると一之瀬が困ったって顔で俺を抱き寄せる。
腰に廻る一之瀬の手。
そこからさらに指が伸びる。
伸びた先は…。


「ここ。
ここに俺のを挿入るんだ」


自分でもトイレットペーパーとか、スポンジ越しにしか触れたことの無い場所に、
一之瀬の指が直接触れている。
思ったより敏感なそこに触れられ、ぞわりと体が強張る。

「んっ」
思わず眉を寄せると、目の前の一之瀬の顔が心配そうに歪む。

「大丈夫?
知らなかったんだし、無理しなくていいよ」
俺の体が強張った瞬間に、一之瀬は其処から手を離し腰を労わるように撫でてくれる。

「俺は可愛い半田の姿が見れたからもう十分。
無理しないでここまでにしよう?」

俺の顔をもう片方の手でゆっくりと撫でてくれる。
俺は間近にある一之瀬の顔を見つめる。

その顔はやっぱり、
切ない、
って顔で。

今までで一番、愛おしさが滲んだものだった。


「嫌だ!」
俺は咄嗟に叫んでいた。

「半田?」
訝しげな一之瀬の声。

一之瀬だってここで止めたくないって思ってるはずなのに、なんでそんな声出すんだよ。
俺だって、俺だって…。

「俺、一之瀬と最後までシたい!
だって、だって…っ!」


・・・もう逢えないかもしれないんだろぉ。


その一言は口に出せなかった。
言えば本当にそうなる気がして。


一之瀬とこうして体を重ねることなんて、たぶん今日が最初で最後で。
それどころかもう逢えないかもしれなくて。
それを思うと泣きたくなる程の焦燥感が俺を襲ってくる。

傍に居たのに気付かなかった俺の恋。
失いかけて、初めて気付いた俺の恋。

やっと、気付けた俺の恋にちゃんとした結末を与えたかった。


「なあ、俺に一之瀬が居た証、刻むんだろ。
忘れないようにちゃんと、俺の中に刻んでよ?」


 

prev next




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -