14*



セックスってさ気持ち良いもんだと思ってた。
どんなエロ本も、どんなAVも、あんあん言って気持ちいいって必ず言うじゃん。

でもさ、本当は違うのな。


俺が真っ赤な顔で頷いたら、一之瀬はすぐさま俺のことを引き寄せた。
さっきまでも体をくっつけてたのに、体を起こして一之瀬の胸に収まってしまうと途端にドキドキしてくる。
さっきまでも同じようなことをしていたのに、
俺が頷いたことでこの行為が一気に意味の伴うものへと変わってしまっていた。
もう俺もこの行為がどこへ向かうのか分かってる。


「半田」
俺の名前を一之瀬が呼ぶだけでどきっとしてしまう。

体が離れると、どことなく一之瀬は悲しそうな顔してて、
え?って思っているとどんどん一之瀬の顔が近づいてくる。

その表情が悲しいって顔じゃなく、切ないって顔だって気付いた瞬間、
俺と一之瀬はキスを交わしてた。

俺にとって初めてのキスはなんだか分からないうちにしてしまっていた。
目なんか瞑る暇無かったし、レモンどころか味なんて全然しなかった。


でも、一旦顔が離れて、また重なった時、俺は「甘いキス」の本当の意味を知った。

「んっ」

ぬるぬるとした温んだ舌同士が絡み合うだけで、「甘い」感覚が下腹部に集まってきて、
一之瀬の舌と同時に絡む唾液が味なんてしないのに「甘く」て、
もっともっと欲しくなる。
もうそれだけしか考えられなくて、二人の周りに「甘く」思考を奪う空気が充満する。


キスの間に俺のTシャツは捲し上げられていて、脱がされる瞬間にどうしても口が離れてしまう。
口が離れる時、俺は一之瀬の舌を追いかけるように口から舌を無意識に出していて、
それに気付いた途端、自分の貪欲さに顔が赤くなる。

でも一之瀬はそれに気付いても俺のことを笑うこともせず、俺にすぐキスを与えてくれる。
キスをしたまま今度は自分のシャツのボタンを外し出す。

一之瀬がシャツを脱ぎ捨て、俺をぐっと抱き寄せる。
勿論キスはしたままで。

「んっ、…はぁっ、んんっ」
熱い肌が重なり合って、キスはもっと激しくなる。
ちゅぷっとか、ぴちゃって音が時折して、その音が堪らなく恥ずかしい。

息も続かないのに、まだまだ欲しくて、
口は酸素を求めて開いているのに、浅ましくも舌だけは絡めたままなもんだから、
口からは変な声が漏れている。
その声にまた煽られて、熱が集まってくる。


「一之瀬ぇ」
口を吐く甘えた声。
ぐいっと体ごと引き寄せられて、またすぐ重ねられる唇。
腰と腰が当たって、お互いの興奮が相手に伝わる。
ほらだって、絡み合った一之瀬の目が欲に濡れてる。
もどかしくって自分から腰を押し付けてしまうと、そこがすっごい熱い。
キスをしてると重なり合った腰が熱を逃がすように勝手に揺れる。
でも決定的な高みには逝けなくて、靄の懸かった頭でも二人を遮る布が邪魔だって分かる。


「いちのせぇ」
はしたないオネダリの声。
一之瀬の名前なのに、「脱がせて、触って」って意味にしか聞こえない。

一之瀬にもそう聞こえたみたいで、すぐ俺のジャージに手が掛かる。

脱がす時に引っかかって、それを見られる前に一之瀬にキスだけで俺が完勃ちしたってバレてしまう。

でも、一之瀬だって俺と変わらない。
一之瀬のジーンズはぱんぱんで、俺が脱がそうとしてもぎちぎちでボタンは中々外れないのに、
ボタンを外してしまうとジッパーは簡単に下がってしまう。

お互いがみっともないぐらい興奮してる。


「ふぁんっ」
そっと重なるように手で触れられただけなのに、なんか変な声が出る。
もうこれ以上大きくならない状態なのに、
下から上へと、もっと天を向くようにってふんわりと撫でられてる。

「いちのせぇ」
今度の一之瀬の名前は、「もっと激しく、強くシて」って意味だ。
それだけじゃ飽き足らず、俺は一之瀬の手に腰を押し付ける。

「半田って思ってたよりエッチだね」
笑いを含んだ一之瀬の声。
頭の中が快感を追うことでいっぱいになっていた俺に、
その言葉で少しだけ羞恥心が戻ってくる。

「あっ!やっ、俺…っ」

「…可愛いよ」

一之瀬が俺の耳元で囁く。
可愛いなんて女の子に言う台詞なのに、一之瀬に耳元で言われるとぞくりと腰の辺りにまた熱が集まり、それと比例して腰の力が失われていく。
もう一之瀬の首にしがみ付いていないと立ってられない。

「い、いちのせぇ…」
俺が名前を呼ぶと、すぐ口が塞がれる。
もう口も肌も、体全部が一之瀬と重なっている。
俺を追い上げる手の動きがどんどん速くなっていく。

「あっ、やっ…いちのせっ、いちのせぇっ!」

一之瀬の名前は便利だ。
頭ん中が真っ白でも、ちゃんと言えてるし、
一之瀬って名前だけで色々な意味になる。

この時は、「もうイっちゃう!」って意味だ。
正しくは「イっちゃうから止めて」って意味で使ったんだけど、
一之瀬には意味が通じなかったみたいで手の動きはもっと速くなる。
しかももう片方の手で先っちょまで触られてしまう。

自分でする時って片手はズリネタの本とかリモコンとか、もしくはティッシュとかに使ってるから、
こんな風に二箇所を同時に触られるって初めてで、一気にスパークしてしまう。


「いっ、いちのせぇええっ!」

俺は一之瀬の首に抱きついたまま、呆気なく欲望を吐き出してしまう。
いつもより長い時間続く吐精が恥ずかしくって、
直接触れている、少し汗ばんでいる一之瀬の肌が気持ち良くって、
俺は随分と長い間一之瀬の肩に顔を押し付けていた。

一之瀬も俺を押しのけることなんてせず抱き止めてくれるから、
それが嬉しくて俺は一之瀬の手が俺のでべちょべちょって事も忘れていつまでも抱きついていた。


 

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