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*一之瀬視点です



「俺まだ何もしてないのに終わってしまうなんて嫌だ。
やっと怪我も治ってこれからなのに逆戻りなんて嫌だ。
もっと、もっとサッカーしたい。
ずっと、ずっとサッカーしたい。
プロになって、爺さんになってもサッカーしたい」
ぎゅっと半田にしがみ付いて小さく叫ぶ。
半田がぎゅっと俺にしがみついてうん、うんって涙声で頷く。

俺がぎゅっとしがみ付けば、半田もぎゅって力を込める。
俺が涙を流せば、半田も涙を溢れさせる。
どんな醜い不安でさえ、半田はうん、うんって頷いてくれる。

半田はどんな俺も受け入れてくれてる。

――ああ、やっぱり半田を選んで良かった。


俺は少しだけ体を起こして半田を見る。
半田は俺よりも泣いていて、顔なんてぐちゃぐちゃで色々と残念なことになっている。

俺はそのぐちゃぐちゃな顔をそっと撫でる。
そんな顔さえ堪らなく愛おしい。


「ねえ半田、俺がここに居た証、半田に刻んでもいい?」

・・・ごめん、半田。ずるい俺を許してくれ。


「えっ、刻むってどうすんの?」

・・・俺はまたリハビリ生活に戻ることになる。
また、ただ体を元に戻す為だけの生活に。
皆は当たり前にサッカーして、学校行って、恋愛したり出来るのに、
俺は全部出来なくなってしまう。
だから今、出来る内に全部したい。


「さっきの続きしたいってこと」

・・・最後のサッカーの相手じゃなく、最初の恋愛の相手に選んでしまってごめん。
心のどこかで半田は日本代表には選ばれないだろうって思っててごめん。


「俺、半田とセックスしたい」

・・・こんな風に半田の中の俺への憧れを無理矢理恋に変えようとしてごめん。
数年後には笑って話せるぐらいの淡い想いに無理矢理形を与えてごめん。
考える猶予さえ与えなくてごめん。


「もう逢えないかもしれないから」

・・・同性の俺とすることがどれだけ半田の未来にダメージを与えるか分かっているのに、半田を選んでごめん。
傍にいれないのに、一人にさせてしまうのに、
そんな背徳行為を強いてごめん。


「ねえ半田、俺の初めての相手になってよ?」

・・・そして、
こうやって半田に訊ねる俺を許して欲しい。
半田の意思で俺に抱かれることを選んで欲しいって思っている俺のことを。
半田の人生を狂わせといて責任を負わない俺なのに、嫌わないでほしいなんて思っているズルい俺のことを。


「…いいよ、一之瀬なら」

・・・その代わり、一生半田のこと忘れない。
こうやって俺を受け入れてくれたこと、
ずっとずっと、
アメリカに行って、傍に居られなくなっても、
それこそサッカーが出来なくなってもずっと忘れないから。


俺は真っ赤な顔で、簡単に俺のことを受け入れてくれた半田のことを抱き締める。
俺のズルい申し出を深く悩むこともせず、受け入れてくれた幼い半田のことを。


「ありがとう半田」

俺は真っ赤でぐちゃぐちゃな半田の顔に自分の顔を寄せる。


俺達はついに超えてしまった。
友情と恋の境界線を。
俺がこんなことにならなければ超えることは決して無かった境界線を、
俺は今、半田の手を引きながら超えている。


 

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