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「実はよ、お前に嫌われちまったと思って少し心配だったんだ。
昨日お前一日中滅茶苦茶不機嫌だったしな。特に夜!
なんか不安で手ぇ出す気分にもなれなかったぐらいなんだぜ?」

たははと少し照れたように笑う綱海に、立向居も思わず笑みが零れる。


「俺もこの三日間ずっと不安と嫉妬でいっぱいでした。
だって赤ちゃんが出来たかもってなった途端、綱海さんてば全然別人になっちゃうんですもん。
俺より赤ちゃんの方が大事なのかなとか思ってました」

その言葉で二人、顔を合わせて笑い合う。


――本当にヒロトさんの言う通り、俺に必要なのはエイリア石では無く、綱海さんとちゃんと話すことだった。


「ねえ綱海さん、俺達もっと気持ちを伝え合うことが大切なのかもしれませんね。
俺、綱海さんがべたべたするの格好悪いことだって思ってたなんて全然しりませんでした。
これからは格好悪いって思うことでも、どんどん教えて下さいね」

「え〜、お前に格好悪いとこ見せんのか?
じゃあよ、お前も格好悪いとこ俺に見せるって約束するか?」

綱海の言葉に立向居はうっと言葉に詰まる。
だって自分は綱海みたいに元々格好良くない。
それなのに格好悪いところなんて見せてたら、それこそ嫌われてしまう。

でも、何でも話し合うってことはそういうことだ。


「が、頑張ります」

立向居が善処すべくなんとか頷くと、綱海がにやにや笑って肩を組んでくる。


「じゃー、今からお前が格好悪いって思ってること、一個暴露な」

「い、今ですか!?」

「おう!俺だけ言ったんじゃずりーだろ?」


さっきのは全然格好悪くなかったのに…。
そう思うとなんだかずるい気がする。
でも肩を組まれてしまうと逃げることも出来ない。
仕方なく立向居は真っ赤になりながらも口を開く。


「…か、体です」

消え入りそうな凄く小さな声。
立向居は小さな声でそう呟くと、身体をちぢ込ませた。


「体ぁ!?」

びっくりしたように大きな声で聞き返されるのが恥ずかしくって堪らない。


「お、俺の体は綱海さんと違ってまだまだ子供っぽいし、傷だらけで恥ずかしいっていっつも思ってて…」

常日ごろ格好悪いって思っていることを話すのがこんなにも恥ずかしいことだって立向居は初めて知った。


恥ずかしくって俯いていると、つんつんとほっぺを突かれる。
今、格好悪いと言ったばかりの未だ子供っぽいぷにぷにほっぺ。
顔を上げると、そこには満面の笑みを浮かべた綱海がいた。


「あー、やっぱ立向居の言う通りだわ。
言わなきゃ分かんねぇことって、やっぱ在るな」

そう言うともう一度ほっぺをむにむにと突いてくる。


「このまだ子供っぽさが残ってるのに、一生懸命傷だらけになりながらも練習して筋肉つけてるって感じの体が、健気で格好良いんじゃねーか!
立向居らしくって俺は大好きだぜ?」

「うっ…」


わーーーーっ!は、恥ずかし〜〜〜〜っ

間近にある綱海の笑顔と、今言われた言葉が恥ずかしくって立向居は顔を伏せる。
顔が熱くて熱くて堪らない。
そんな風に思っていたなんて知らなかった。
自分が嫌いなところを好きって言って貰えるなんて思っても無かった。


――でも、少しだけ自信が持てそう。

下を向いたままへらりと笑った立向居に綱海が言葉を繋げる。


「それによ、○○ん時にすぐ△△△になって俺の●●を奥まで□□するところとか、
口では嫌って言ってんのに●●は××になって■■■が止まらないところとかも、
立向居らしくって俺は大好きだぜ?」

「!!」

「ッ魔王・ザ・ハンドぉおおお!!」

セクハラ魔人を立向居は渾身の必殺技で吹き飛ばす。
必要以上に真っ赤になった立向居は、はあはあと肩で息をする。

――これじゃあ折角のシリアスな話し合いが台無しだ。
でも…。

砂浜に叩きつけられた綱海が立向居の名前を呼びながら立ち上がるのがちらりと見える。

――でも、これが俺達らしいのかな?


「照れんなよ立向居〜。本当のことだろって」

「知りませんっ。
そんなことばっかり言う綱海さんにはあの事は教えてあげませんから」

「なんだよ、あの事って?」

「優しい魔法使いが魔法を使えるってことです」

「はあ!?」

顔中を?マークでいっぱいにしている綱海から逃げるように走り出す。


「綱海さん、早く戻りましょう!
もう朝食の時間過ぎてますよー」



魔法使いが魔法を本当に使えることはもう少しの間は綱海には内緒。
二人がなんでも話せるようになって、
そして二人が本当に欲しいと思えるようになるまで、綱海には内緒。
まだまだ魔法なんて自分達には分不相応なものだ。

それがそう遠くない未来だといいな。
立向居はそう思いながら、宿舎までの道のりを走った。


 END
 

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