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もう誰も残っていない食堂で二人で食事して。
それからもう誰も居ない大浴場で二人で風呂を浴び、それからなんとなくそのまま二人で染岡の部屋に戻る。
一生懸命探していた分、少しだけいつもよりも離れ難かったのかもしれない。


「ね、染岡クン。見て見て、今日の戦利品!」

部屋に戻った途端、吹雪がジャージを脱ぎ始める。


「どう、似合うでしょ?」

ジャージの下から出てきたのは、女子のブルマーセットという、じゅんじょうウェアだ。


「珍しく俺より風呂が早いと思ったら、そんなもん下に着てたのかよ!?」

「あはは、吃驚させようと思って。
これね、今日スーパー大阪CCCと戦って貰ってきたんだよ。
可愛いでしょ?」

そう言うと吹雪は一回転してキュピリンとポーズを決める。


「おまっ、今日俺がどんだけ心配したと思ってんだ」

アイドルばりのその姿に、染岡は怒る気力も失せてがっくりと項垂れる。
怪我の痛みでどっかで行き倒れてんじゃねーかとか。
病院に行くのに迷子になったんじゃねーかとか。
走り回っている間に心配していたずっと染岡の頭を支配していた「最悪の事態」の実態がまさかのブルマでは、漢を自認する染岡は何も言えないとばかりに頭を抱えた。
下手な女子よりも似合っているのが余計気力を奪う。


「ごめんねー、染岡クン。
でも、これ手に入れるの結構大変だったんだよ?
相手が女の子だから豪炎寺クン方式が使えないし」

「豪炎寺方式?」

「そ、お腹にファイヤートルネードならぬエターナルブリザード」

そりゃ、ただのカツアゲじゃねーか。
にっこり微笑む吹雪に染岡は心の中でツッコミを入れた。


「だからまず、試合をするために十人スカウトしなきゃだったんだけど。
僕ってほら、女の子にはすっごいモテるけど、男にはそうでもないから中々十人揃わなくって。
キャプテンはすごいよねー、老若男女問わずみんなに人気だもんね。
僕なんて最後わざとボールぶつけて気絶したとこを有無を言わさず連れて行っちゃった」

もう…、何も言うまい……。
結局豪炎寺方式使ってんじゃねーか!という染岡のツッコミは再度心の中で入れられた。


「でも、そのお陰でほら!
じゅんじょうウェア無事ゲーット!!」

「……で?
じゅんじょうウェアゲットはわかったから、それでどうする気だお前は?」

イェーイとVサインをした吹雪に、染岡の大分お疲れモードでぐったりと質問が飛ぶ。
改めて訊かれた質問に、吹雪はぐっと言葉に詰まった。
コスプレ紛いの格好も、相手が冷めた反応しかしてくれないと滑稽でしかない。


「え?えーと…そのぉ…。
……染岡クンに色仕掛け?」

染岡の言葉に途端にしどろもどろになり、最後は恥ずかしそうに上目遣いになってしまう。


「じゃあ、失敗だな。
ほら、用が済んだんだからさっさと帰れ。
俺は疲れたからもう寝る」

そう平坦な調子で言うと吹雪を無視してベッドに横になる。
今日は吹雪を追い出す事もしない。
そんな元気ももう残ってないようだ。


「もう、染岡クンってば!」

さっさと寝に入った染岡を吹雪は慌てて揺すった。
だが、反応が無い。
ぶっちゃけ無反応ほど対応に困る事はない。
吹雪は折角のブルマ姿をどうしようかと拳をかじった。


「あっ、そうだ。
染岡クン、僕マッサージしてあげるよ」

何かに閃いたようにそう言うと返事も聞かず布団を剥ぎ取った。

「寒っ」

染岡が抗議の声を上げるが吹雪は気にしない。


「早くうつ伏せになってよ」

引く様子の無い吹雪に染岡は渋々うつ伏せになった。
うだうだと言い合いになるより、吹雪の気が済むならそれぐらい従おうっていう染岡の悲しい思惑が見え隠れする。
うつ伏せになった染岡の片足に、吹雪はさっと跨った。


「今日は探してくれてありがと」

語尾にハートマークを付けながら、吹雪は染岡の太ももを丁寧に揉み始めた。
ソフトタッチで足の付け根辺りをやけに長く揉む。
やっと手が移動したかと思うと、染岡の足を少し広げ太ももの内側に手が来る。
太ももを両手で挟むようにして揺さぶりながら太もも全体を上下する。
上まで来ると内側の指が掠める様に染岡の局部に触れる。


「…おい、わざとか」

「え?なんのこと?」

染岡が低い声で訊ねるが吹雪はとぼけてまともに答えない。
反対の足に跨ると同じような刺激を与える。


「じゃあ、今度は仰向けになって」

もう既に前が大分反応してしまっている染岡はその声にギクっとする。


「あ〜、充分やってもらったから、もういい」

染岡が気まずそうに断るが、そんなことを気にする吹雪ではなかった。


「僕を探し回ったせいで、明日の練習に疲れが残ったら嫌でしょ?
ほら、早く仰向けになって」

そう言うと力任せに無理やり染岡をひっくり返す。
染岡の少しジャージが持ち上がった前が露わになるが、吹雪はそれを気にした様子もない。
目に入っていないかのように平然と先程と同じように染岡の片足に跨る。


「染岡クン、だいぶ疲れてるみたいだねー。
…固くなってるよ」

意図的に主語を省かれた吹雪の言葉に、染岡は再度ギクっと身体を強張らせた。
でもすぐに筋肉のことを言ってると分かると染岡はほっと胸を撫で下ろした。


「固いよう」

そう言いながら、吹雪はんっんっと声を漏らしながら先程よりも露骨に触れだした。
しかも、今回は仰向けなのでブルマー姿が否が応でも目に入る。
顔をほんのりと染め、息を荒くして自分の足に跨る吹雪。
焦らす様に、時折触れる指。
しかも……


「なあ、その下、パンツ履いてんのか?」

さっきから足に伝わる感触に、染岡はついに疑問をぶつけた。


「履いてないよー。
だってトランクス履いたらはみ出ちゃうから」

ちらりとブルマーの上を捲り、吹雪は殊更白い腰を染岡に見せ付けた。
扇情的な吹雪のノーパン宣言に、染岡はついに白旗を揚げる。


――もう駄目だ…。


吹雪の子作り宣言付近からずっと禁欲生活を送らざるを得なかった染岡は、もう一週間以上もアレを処理していなかった。
ぶっちゃけると一般的に言う「タマッテル」という状態である。
そんな染岡が吹雪の捨て身の色仕掛けに勝てるはずが無かった。


ブチっと何かが切れる音が確かに聞こえた。
染岡は急に起き上がると、自分に跨る吹雪と位置をぐるりと入れ替える。
そして吹雪をベッドに押し倒すと無言で体操着を捲りあげた。
まさに野獣!!
だが吹雪は首筋に染岡の唇を感じながら心の中で喝采をあげていた。


――やったあ!



子作り宣言四日目。
捨て身の色仕掛け作戦、成功?


 

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