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「ね、早速今晩から子作りしよ!ね?」


大きな声で立派な子作り宣言をした後、染岡の耳元でそっと囁く。
それは甘える為であって、辺りを憚っての小声チョイスでは決して無い。


「何言ってんだ、テメェは!!」

瞬間湯沸かし器よろしく、染岡は顔を瞬時に真っ赤に染め、ぐしゃっと地面に吹雪を押しつぶす。
そしてそのまま吹雪を放置してスタスタと自室へと戻ってしまう。
後には鼻を強打した吹雪と周囲の好奇の目だけが残された。


もう!照れ屋なんだからぁ、染岡クンは。
へこたれない吹雪は地面に倒れたまま、そんなことを思っていた。



自室に戻った染岡はイライラしながらジャージから寝間着に着替え始める。

チッ、あいつは皆がいるのに大声で変なこと言いやがって。
俺はぜってーヤんねえぞ!

投げ捨てるように脱いだジャージの上着をベッドに放る。
皆の前であんなことを宣言された染岡は、恥ずかしくってもう皆がいる談話室や食堂には戻れない。
ふて寝を決め込んだ染岡はジャージの下に手を掛ける。
その瞬間、ノックも無しに開けられるドア。


「染岡クン!」

すぐさま復活して染岡に会いに来た吹雪と、ジャージを脱いでOP1(おパンツ一丁)状態の染岡の目が合う。


「もう、気が早いよ〜、染岡クンってば」

そう言って嬉しそうに照れる吹雪の顔に枕を投げつける。
シュートばりのスピードで吹雪の顔にめり込む枕。
そして、無言で染岡は吹雪を部屋から押し出そうとした。


「ちょっ、何すんの。染岡くん!」

枕如きでは傷を負うはずもない吹雪が、抗議の声を上げるが知ったことではない。

「出てけ」

冷たく言い放つと吹雪を部屋から蹴り出した。
バンッと想いっきりドアを閉めると、すぐさま部屋の鍵を閉めた。



子作り宣言一日目。その日は吹雪の完全敗北で幕を閉じた。




「すまん、染岡!」

次の日の朝、染岡が食堂に降りていくとすぐさま風丸に謝られる。

「吹雪にしっぽのこと言ったのは俺なんだ」

風丸の長い髪が頭を下げたせいでバサリと垂れてくる。


「なんの話だったか聞かれたから答えただけだったんだが、こんなことになるなんて…」

申し訳無さそうな風丸に、染岡の口は自然とひん曲がる。
コイツも知ってるのか…。
吹雪の子作り宣言の時に、あの場に居なかった風丸も騒動を知っている様子に染岡は愕然とする。
この分ではほぼ全員が知っているに違いない。
そう思うと染岡の心は朝だというのにどんよりと曇る。


「いいって、お前のせいじゃねーだろ…。
妙なこと言い出す吹雪が悪いんだろーが…」

風丸が謝るのは筋違いだと、染岡は力なく呟いた。


「困ったことがあったら俺に言ってくれ。
せめてもの罪滅ぼしがしたいんだ」

いつになく覇気の無い染岡を心配してそう言う風丸に、何も言わずヒラヒラと手を振って染岡は食堂の席に着く。
大きく溜息をついた後、丁度食堂にくしゃみをしながら入ってきた吹雪と目が合う。
染岡を見つけて嬉しそうに手を振る吹雪に、もう一度溜息をつく。
昨日だいぶ廊下で粘って風邪気味なんだろうに全然へこたれた様子のない吹雪。


あれで、諦めたってことは絶対に無いだろうな。


今晩も特攻してくるであろう吹雪のことを思うと溜息を抑えられない染岡であった。



 

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