不動さんのしっぽ
それに一番最初に気づいたのは久遠監督だった。
というより彼はイナズマジャパンにおいて孤立していたので、彼の異変に誰も気づかなかったのだ。
回りくどい説明を一切しない久遠監督は、それに気づいてすぐさま確認行為に移る。
「…不動」
「はぁ?なんすか、監督」
振り向きざま触れられる、不動のおしり。
「ひゃうん!」
思わず出た、普段の不動からは想像もできない可愛らしい声。
ピキっと音を立てて時が止まる。
その行動不能の魔の時間から先に回復したのは不動だった。
顔を赤くしたまま、いつもの調子で皮肉げに久遠監督の顔を下からねめつけた。
「あれ〜セクハラですか、監督ぅ〜?
娘と同じ歳のヤローのケツ触るなんてよっぽど溜まってんすねぇ〜」
「でもさぁ〜」
そこで言葉を切ると人が違ったように下から睨み付けた。
「俺のケツはそう簡単に触れるほど安くねーんだよ。タコッ!!」
そう分かりやすい捨て台詞を残すと、不動はもう用は無いとばかりにスタスタと行ってしまう。
「…違う」
未だ固まったままの監督の呟きは、不動に届くことはなかった。
去っていく不動の後ろ姿は、腰の上部辺りがジャージの上からでもポッコリと膨らんでるのがわかる。
そう、久遠監督はセクハラがしたかったわけでもなくましてや欲求不満でもない。
その膨らんでる部分を触って確かめたかっただけだった。
最初はトレーニングの一環で腰に重りのような物を着けているのかと思った。
自主的に負荷を掛けているのなら練習量や動きのスピードなど監督としていろいろ念頭に置いておきたいことが多い。
だから確認しておきたかっただけだった。
久遠監督は先ほど服の上から触った感触を思い出す。
――あれは…。
「…しっぽ?」
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