GET&GIFT | ナノ
※注意事項
・璃乃さん宅の夢主ちゃん、緋子ちゃんの名前変換は無しです。
・『ダイヤモンドは治せない』の世界にうちの荒木荘夢主が居たら、というIFネタです。

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ナマエは重い荷物を両手に下げ、家路へと急いでいた。胸中では、(どうして私がこんなに重い荷物を運ばなきゃあならないんだ。あの同居人どもめ…着いて来てって言った瞬間に忙しい振りしやがって…)と恨み節を炸裂させながら。
重くなってきた足を引き摺るようにして、ひたすら前へと進む。カフェ・ドゥ・マゴが見えてきた。あれを過ぎればあと一息。もうすぐで汚くも暖かい我が家のボロアパートが見えてくる筈だ。…さて、帰ったらあの薄情な同居人たちをどうしてくれようか。

――その時である。
遠くの方から自分を呼ぶ「オーイナマエー!!」という声をナマエは確かに聞いた。聞き覚えのある声だ、とキョロキョロと辺りを見回すと、もう一度「オーイナマエ!」…名を呼ばれた。

「こっちこっち!」

声のした方を視線で辿っていけば、行き着いた先にはカフェ・ドゥ・マゴでお茶をしていたらしい友人たち―緋子、仗助、億泰―の姿が。ナマエを呼んだのはどうやら億泰だったらしい。道理で聞き覚えのある声だった筈だ。何せ彼の声は毎日聞いているのだから。

彼らの姿を認めたナマエは、鬱々とした気分が途端に嬉しいものに変わっていき、先程とは違い足取りも軽く彼らの元へ向かった。


「緋子ちゃん!…と仗助くんと億泰くん!」
「何だよ、俺らはおまけかァ〜?」
「重そうな荷物だね。それ何日分の食料なの?」

ブー垂れる億泰には「ごめんごめん」と謝罪をし、緋子の質問に答える。

「これでも2日分なの。吃驚でしょ?ほら、私の所って大人数だから…」
「そうなんだ、大変だね。でも大人数は賑やかそうで憧れちゃうな」
「賑やかと言えば確かに賑やかだね。そうだ、緋子ちゃんもいつか家においでよ。皆に紹介したいから。…あ、でも男ばかりだから駄目かな…。うち、年甲斐もなく若い女の子好きなオッサンばかりだし…緋子ちゃんが危ないかも。私が守ってあげたとしても勝ち目無いしなあ…」

一人ブツブツと呟く友人の姿を見て緋子は心配になった。一体どんな家庭環境で育ってきたんだ。

ところでこの緋子とナマエの二人。今でこそ仲の良い友人同士ではあるが、元来はナマエと緋子の仲はただのクラスメート程度のものだった。学校へ行ったら挨拶を交わし、時には二、三言交わす程度のそんな仲。だが、ある日のほんの些細な出来事を境に二人の仲は急速に縮まった。それからは親友と呼べる程に仲が良くなり、そうして今日に至るまでとなる。仗助や億泰ともその縁で知り合い、仲良くなった。

「ナマエちゃん、良ければ少し休憩してかない?」
「そーそー。その同居人たちは待たせとけば良いんじゃねぇか?」

緋子と仗助に誘われ、更には億泰が隣のテーブルから椅子を一つ拝借して来てはナマエも断ることは出来なかった。否、断る気など更々無かった。仲の良い友人たちと過ごすのは、買い出しよりも優先すべき事なのだから。

「じゃあ、そうさせて貰おうかな」

ナマエは大好きな緋子の隣へと腰掛けた。


***


学生が集まって話す内容など、何の身にもならないような話ばかりだ。けれど、それが彼らにとっては最も重要であり、何よりも楽しいことなのだ。
やれあの教師に怒られただの、あの教師の教え方が上手いだの、どの漫画が面白かっただとか、あのクラスの誰それちゃんが停学になっただとか、そんな他愛もない話。学生である今しか出来ない話を四人で語りあった。
時間は無情にも過ぎていくが、話は尽きない。そして年頃の四人が揃うと色恋事にまで話が及ぶのも仕方のない事だった。

「…ねえねえ、三人には好きな人って居るの?」
「どっ、どうしたのいきなり?」
「ただの話のネタだよ」

頬を朱に染めた緋子とそれを見てニヤニヤするナマエ。今この瞬間は、ナマエの同居人よりも確実に彼女の方が危ない人物である。

「(緋子ちゃん可愛いなあ…)」
「そういうナマエはどうなんだよ」

困り果てる緋子を見兼ねた仗助が助け船を出す。人に聞くからにはお前も答えろよ、との声には出さぬ威圧付きだ。

「私?居ないよ?」
「ほんとかよ?言いたくないからって嘘ついてんじゃあねーだろうな?」

仗助の追及を軽く往なし、ナマエは答える。

「やだなあ、嘘ついたって仕方ないでしょ!どうも学校ではタイプの子が居ないというか……で、どうなの?緋子ちゃんは?」
「ええっ、私は…」

緋子は何と答えて良いのやら、言葉に詰まってしまった。
ただ、脳裏に真っ先に思い浮かんだのは仗助の顔。それが恋愛感情から来るものなのかは分からなかったが、彼の隣が心地良いのは確かだったし、ずっと隣に居たいとも思った。けれど、そんな事を本人や友人たちの前で堂々と言える筈がない。
緋子は中途半端な思考を断ち切るべく頭を振った。

「緋子、顔真っ赤だぜェ〜?」
「やだ、おっくん見ないで!」
「えっ、その反応はもしかして誰か気になる人がいるの!?きゃーっ教えて!」
「おい…億泰、ナマエ!あんまり緋子をからかうと仗助さんが怒るからな!」
「そう言う仗助くんは気にならないの?」
「はっ!?いや、俺は…」

モゴモゴと口篭もり、視線を宙にさ迷わせる仗助。誰がどう見ても一目瞭然で気になっているのが分かる。

ぎゃあぎゃあと迷惑も顧みずに騒ぐ友人たちに、緋子は静かに呟いた。

「…好きな人、居るよ…?」
「ええっ!」
「マジかよ緋子!!」

緋子のその一言にナマエと億泰は揃って身を乗り出した。仗助も完全に落ち着きを無くしている。

「…私は、仗助とおっくんとナマエちゃんが好きだよ。…それじゃあ駄目かな?」
「〜〜っ!駄目じゃないよ!私も緋子ちゃんのこと好きだよ!」

感極まって緋子に抱き付くナマエを眺め、億泰が「俺も混ざりたい…」とポロリと零した。即座に「来世女になって頑張れよ」と仗助に慰められていたが。

「なあ、緋子〜…ナマエみたいには出来ないけどよ、俺も緋子の事好きだぜ〜?」
「ありがとおっくん!」
「…お、俺も…好きだぜ…」
「!、仗助もありがと」
「…おう」

ナマエにぎゅうぎゅうに抱き締められたまま、緋子は億泰と仗助に笑顔を見せた。


***


緋子にベッタリと引っ付いている間にも時間は刻々と過ぎていく。『このまま時が止まれば良いのに』と願ったって、どこぞのスタンド使いじゃあるまいし、そう簡単に時間が止まるはずもなく、そろそろ戻らねばナマエは確実に大目玉を食らうだろう。

「…嫌だけど、私そろそろ帰らないと怒られちゃうからもう行かなきゃ。それじゃあ緋子ちゃん、仗助くん、億泰くん、また明日学校でね!」
「うん、ばいばい」
「じゃあなァー!」
「気ぃ付けて帰れよー」
「はいはーい」

緋子、億泰、仗助の順に見送られ、ナマエは友人たちに手を振ってからその場を後にした。


来た時と同じように両肩には荷物の重みがずっしりとのし掛かっている。
だが、パンパンに膨らんだレジ袋を両手にぶら下げていても、ナマエの心は晴れやかなまま だった。それは、予想外に"良いもの"を見れたからかもしれない。

ナマエは見逃さなかったのだ。彼らは無意識の内にやっていて、きっと自分たちがどうしていたのかも気付いていない――そんな反射的行動を。けれど、ナマエは確かに見た。
色恋話へと及んだ時に億泰が緋子にちらりと視線を送ったのを。緋子が仗助を熱の籠った視線で見ていたのを。そしてまた、仗助も―――。
目は口ほどに物を言う、とはよく言ったものだ。




璃乃さん、この度は相互リンク有難う御座いました!

勝手に緋子ちゃんとうちの夢主を親友にしてしまいました…!お叱りを受ける覚悟は当に出来ております…!

番外編で億泰が緋子ちゃんの事を気にしている風でしたので、ちゃっかりフラグも立てさせて頂きました。仗助もちょっぴり。いろいろと捏造してしまって本当にすみませんでした…!IFストーリーなので、多目に見てやって頂けると幸いです…><
もしも、緋子ちゃんのキャラが違いすぎるから書き直して!だとか、内容がどうしても気に入らない!なんてのが御座いましたら、お申し付け頂けると書き直す所存ですので!

(140202)
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