GET&GIFT | ナノ
※注意事項
・公姫さん宅の莉乃ちゃんと雄一さんは名前変換無しとなっております。

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「ただいまー」
「ただいまです」
「……疲れた」

 荒木荘の一室に三人の声が響く。
 どうやらショッピングの帰りらしい。私服姿のナマエと莉乃、荷物持ちとして引っ張って来られたディエゴが、靴を脱いで部屋に上がり込んだ。

「三人ともおかえり。無駄遣いはしなかっただろうね?」
「大丈夫ですよ」
「こいつらさんざん連れ回したくせに大して買い物はしなかったんだぜ……」
「ウインドウショッピングってやつだよディエゴくん」

 床に置かれた買い物袋には、二人の買った本や服などが詰められている。
 袋の中をナマエと莉乃が整理していると、吉良が思い出したように声をかけた。

「そうだ、莉乃」
「はい?」
「君達が出かけている間に、雄一から電話があったよ。来週末日本に来るそうだ」
「えっ……本当ですか!?」

 驚いた莉乃は持っていた文庫本を取り落とす。
 それに対し、ナマエは聞きなれない名前に首を傾げた。

「雄一……さん? 吉良さん、その人って誰なんですか?」
「ああ、ナマエはまだ知らなかったか。雄一はわたしの従兄だよ」
「えっ!?」
「そして莉乃の父親だ」
「えっ!?」
「珍しく仕事以外の電話をしていると思えば、莉乃の父親だったか……」

 吉良と莉乃の血縁と聞き、部屋にいた他の住人達も興味が湧いてきたらしい。
 どこからか「挨拶しておかねば」なんて呟きも聞こえたが、「お前たちと会わせる予定はない」と吉良がぴしゃりと言い放った。

「莉乃ちゃんが吉良さんの親戚ってことは知ってましたけど……吉良さんの従兄で莉乃ちゃんのお父さん……」
「ん? 何だナマエ、君も気になるのか?」
「え、まあ、はい……」
「……そうだな」

 吉良は未だ放心している莉乃をちらりと見てから、ナマエに向き直る。

「実は雄一は莉乃に友達ができたか心配していてね」
「そうなんですか……」
「莉乃から紹介すればあいつも安心すると思うんだが……莉乃」
「……はっ、何ですか吉影さん」
「雄一に会う時に友達としてナマエを紹介したらどうだい?」
「え?」
「い、いいですよ吉良さん! ここは家族、って吉良さんはそういうわけでもないのか……とにかく水入らずってやつですよ!」

 吉良の提案に、ナマエは慌てて手を振りながら言う。
 一方、吉良にとっては他の住人達ならばともかく、ナマエを自分の従兄、というより莉乃の父親に会わせない理由はなかった。
 心配な点がないというわけでもないのだが。

「わたしは特に気にしないが……莉乃はどうだ?」
「私も気にしませんけど……ただ……大丈夫でしょうか?」
「……まあ、君の友達だと言えば大丈夫だろう」
「? 何の話?」
「あ、いえ、何でもありませんよ」
「ああ、こちらの話だ。それでナマエ、どうするんだ? わたしも莉乃も君が来ても構わないし、雄一も莉乃の友達と聞けば喜ぶはずだよ」
「……莉乃ちゃん、いい?」
「ええ、もちろん」
「じゃあ……行きたいです」
「わかった。雄一にそのことを連絡しておこう」

 周囲から「何故ナマエだけ……」と多少の不満はあったものの、話はまとまったようだ。
 それからというもの、どことなくそわそわしている二人を、吉良が微笑ましげに眺める日が続いた――

 

******

 

「若っ」

 出会って第一声がこれだった。

「莉乃ー! 吉影ー! 元気だったかー?」
「おい、こんなところで大声を出すんじゃあない……目立つだろう」
「……お父さんは相変わらずみたいですね」

 空港まで莉乃の父、雄一を迎えに来た三人。
 彼ら、正確には吉良と莉乃の姿を見つけて駆け寄ってきたのは、すらりと背の高い『青年』だった。
 親しげに言葉を交わす三人に呆気にとられていたナマエだったが、ふと青年がそんなナマエに目を向けた。

「あ、君がナマエちゃん?」
「は、はい」
「初めまして、莉乃の父の桜庭雄一です。いつも莉乃が世話になってるみたいだね、ありがとう」
「いえいえそんな……!」

 ナマエはふと、雄一が微笑みながら自分をじっと見つめていることに気付いた。
 熱心に視線を送られ、つい目を逸らしてしまう。
 雄一はそれにくすりと笑うと、吉良に向き直った。

「とりあえずここで話し込むのも何だから、ランチにしようか。空港の中のレストランでいいか?」
「ああ、構わないよ」
「私もです。ナマエさんは?」
「あ、うん。そうしよっか」

 

 そうして四人がレストランまで移動すると、ちょうど隅の方の席が空いており、そこで昼食をとることとなった。
  料理を食べながら話すことといえば、雄一と吉良のお互いの仕事の話や、莉乃の学校の話、莉乃とナマエが二人で遊びに出かけた時の話など。
  あらかじめ三人で『莉乃は吉良邸で暮らしていて、ナマエは他校の友達』だと話を合わせておいたので、個性豊かな同居人の話をすることはなかったが、それでもなかなかに話は弾む。
  そんな中、ナマエはちらちらと雄一の方を見ていた。

(プッチさんのひとつ下って聞いたけど、とても吉良さんより年上には見えないなあ……ヴァレンタインさん達も十分若々しいけど、この人は規格外っていうか……この親にしてこの子ありってことかな)

 ちょうど先程「お手洗いに」と席を立った莉乃の姿を思い浮かべながら、うんうんとナマエが頷いていると、どこからかバイブ音が聞こえた。吉良の携帯だ。
 吉良が従来型の携帯を開くと、形の良い眉が歪められる。どうやら同居人のうちの誰かからの連絡らしい。
 娘は従兄の実家で二人で暮らしている、と思っている雄一に聞かれるわけにはいかないので、吉良は一旦席を立つことにした。

「すまない、仕事の電話だ」
「おー、いってら」
「……ナマエに変なことを吹き込むんじゃあないぞ」
「変なことって、吉影の昔の話とかか?」
「え、何それ聞きたいです」
「駄目だ。……すぐ戻って来るよ」

 そう言って離れていった吉良を見送ると、ナマエはいつの間にか雄一と二人きりになっていることに気付く。
 少しの沈黙があった後、先に声を発したのは雄一の方だった。

「ところで、ナマエちゃん」
「あ、はい。何ですか?」
「……綺麗な『眼』をしているね」

 瞬間、ぞわりとナマエの背筋に冷たいものが走る。
 雄一の『眼』に、妖しい光が灯っているように見えた。
 しかしそれも一瞬のことで、すぐに先程までの明るい笑みに戻る。
 気のせいだったのだろうか、とナマエは内心首を傾げた。

「ふふっ、口説くみたいになっちゃったか。さすがに莉乃の友達に『そんなこと』はできないよ」
「は、はあ……」

 雄一はにこにこと笑っている。
 いくらあの吉良の従兄とはいえ、それ以前に莉乃の父親だ。きっとまともな人だろうと、ナマエは先程の違和感を気のせいだと結論付けた。

「……俺が離れてからも時々連絡をとってるけど、あの子は自分のことをあまり話さなくてね。元々愛想のいい方でもないし、素直じゃあないところもあるから……ちゃんと新しい環境で友達ができたか心配してたんだ。吉影は大丈夫だって言ってたけど、やっぱり不安でさ」
「…………」
「でも、君みたいな仲のいい友達がいるみたいで安心したよ」

 そう言って微笑む雄一は、『父親の顔』をしていた。
 時たま父親のように感じる吉良やプッチですら、このような顔を見せたことはなかったように思う。
 娘を想い穏やかな表情を浮かべる雄一を見て、ナマエは莉乃が羨ましくなり、同時に実の父親が恋しくもなった。

「それから、吉影も。君のこと、なかなか可愛がってるみたいじゃあないか」
「え、……そう見えます?」
「ああ。俺から見ても仲良さげだったよ」
「そ、そうですかーあはは……」

 まさか長らく一緒に住んでいるとは思うまい。
 引きつり笑いを浮かべるナマエに雄一もくすくすと笑った。

「吉影のことも、莉乃のことも。これからもよろしく頼むよ」
「……はい、お任せください!」

 今度はナマエがにこりと笑みを浮かべる。
 それを見て雄一も「頼もしいことだ」と笑顔を返した。

「ただいまです……何の話してたんですか?」
「あ、おかえり莉乃ちゃん。えっと、」
「吉影の昔の話だよ。莉乃も聞きたいか?」
「え、それは気にな――」
「おい雄一……わたしのいない間に何を話していたんだ」

 ちょうどいいタイミングで、莉乃と続けて吉良が二人のいる席へ戻ってきた。
 揃って残念そうな顔をする三人に、吉良は思わず溜息を零す。

「幸せが逃げるぞー」
「誰のせいだと……」
「んな心配しなくても吉影に悪い話なんかしてないから大丈夫だって。な、ナマエちゃん」
「……はい。大丈夫ですよ、吉良さん」
「……ならいいがね」
(気になる……)

 顔を見合わせて笑うナマエと雄一に、 莉乃は首を傾げるのだった。

 

******

 

 莉乃は雄一の滞在中一緒に実家で暮らすことになり、吉良とナマエは二人で荒木荘への道を歩いていた。

「莉乃ちゃん、何だかんだで嬉しそうでしたね」
「まあ久しぶりに顔を合わせたわけだからね……」

 二人は雄一に連れられて歩く莉乃の様子を思い出し笑う。
 いくら似ていても並ぶと親子には見えない二人だが、確かに父と娘であった。
 しばらくそのまま歩いていたが、ふと、吉良が『懸念事項』を思い出した。

「そういえば、ナマエ」
「?」
「雄一に何か変なことは言われなかったか」
「うーん……いえ、特には」
「……そうか」

 『綺麗な眼』発言はもはやナマエの中ではただの褒め言葉と化しており、『従弟をよろしく』も本人に伝えるようなことでもない。
 そんな考えでナマエが返すと、吉良はどこか安心したように息をついた。

「そういえば、雄一さんって話す時目をまっすぐ見る人なんですね。あれで落ちる女の人はいるだろうなあ〜……」
「…………」
「あれ、どうかしましたか吉良さん?」
「……いや……」

 後で『くれぐれもナマエに手を出さないように』と念を押しておかなければならないなと、今度は疲れた溜息をつく吉良であった――




夢の莉乃ちゃんとそのお父さん雄一さんとの共演夢…!家の夢主が二人と喋っているだけで感動してしまいました…!ショッピングに行くほど莉乃ちゃんと仲良くして頂けて兎に角嬉しかったです(///∇///)それに雄一さんに莉乃ちゃんを頼むとお願いまでされて…!公式でお願いされたということは、きっとおはようからおやすみまでべったり引っ付いて莉乃ちゃんを守ろうとしますが構いませんね!?←荒木荘夢主なら一緒のお布団にだって寝ますし、お風呂にだって一緒に入りますよ!?!?
あと何が気になるって雄一さんが知ってる吉良の過去ですよね(笑)莉乃ちゃんと一緒に是非拝聴させて頂きたいです。

公姫さん、素敵な夢を有難う御座いました!
これからも宜しくお願いします。
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