ミセス・プレジデント | ナノ
『ブラックモアよ…』
「はいィ、何でしょうか…」
『私は今から着替えようとしている』
「はあ」
『良いか。分かりにくかったようだからもう一度言うぞ。着替えようとしているのだ』
「そうですか」
『そうだ』
「…スイませェん、よく分からないのですが何なのでしょう」
『ブラックモア…いいか、お前は頭の良い男だ。つまり、私の言い方が悪いのだな。そうだろう?ちゃんと言おう。着替えるから出ていけ』
「すいませェん、それは致しかねます。わたくしには貴方をお守りする役目が」
『それは有難い。凄くな。だが、着替えシーンを見られるのは困るのだ。お前とて大年増の三段腹を見る趣味は無いだろう?』
「お言葉ですが、大統領の腹は三段腹ではなく引き締まっておいでですが」
『いいか、そういう問題じゃあないんだ。でもフォロー有難う』
「スイませェん」
『いや、謝らなくていい。何も怒っている訳ではないのだから。ただ、このままお前が此処に居続けるとそうなる可能性は有るがな』
「すいませェん、ですが、やはり貴方の傍を離れるわけには…」
『確かに朝イチで電話して身辺の警護をお前に任せると言った。マイク・Oが居ないからな。だがな、まじで朝イチに来なくて良いから。何なのだその張り切りようは。遠足を待つ小学生か?』
「朝から電話で起こされる身にもなってください」
『それはごめんね』
「では着替えを」
『やはり言い方が悪いのだな。そうだよな?ならば改めて言い直そう。恥ずかしいから外へ出てろ』
「わたくしは恥ずかしくありませんが」
『お前はな?お前は脱がないからな?だが、私はどうだ?脱ぐだろう?全裸だよ。スッポンポンなんだよ。ブラックモア、お前は私を女だと知る数少ない部下だ。ならば分かってくれるだろう?男の前で裸では恥ずかしくもなる』
「わたくしは平気です」
『よし、ちょっと整理しよう。な?』
「その必要はありませんが」
『ちょっと黙ってなさい。良いかね?私は女、お前は男。ここまでは良いな?』
「はい」
『性別は真逆だ。お前だって女の前で全裸になれるかと問われれば答えはノーだろう?』
「貴方の命令ならば何処だろうと脱ぐ覚悟ですが」
『おかしいな、部下の忠誠心があらぬ方向へいっている。…よしブラックモア、ならば私の命令が無ければ脱げないだろう?そうだな?』
「わたくしを何処でも脱ぐ変態とお思いなので?」
『何でちょっと怒ってるんだ。…兎に角な?私も同じ状況なのだ。人前で脱ぐ変態行為は好まないという訳だよ』
「此処にはわたくししか居ませんからご安心を」
『どうして振り出しに戻るんだ?双六か?ン?』
「大統領、もう時間がありません」
『いや、おい…マジか?お前マジか?』
「?」
『…はあ、もういい。ブラックモア…向こう向いてろ…』

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