共依存 | ナノ

「只今戻りました」
「あ、初流乃君おかえりなさい」

玄関迄彼を出迎えにいく。いつもなら、ここで熱い抱擁が待っているのだが…。

「お腹が空きました。今日の夕飯は何ですか?」
「え。あ…あの、グラタン、だよ。初流乃君の好きなタコサラダも作ったし…」
「そうですか、それは楽しみです」

まさかの素通り。
こんな事は初めてだ。何時もは中々離してくれないし、それが恥ずかしくてどうしようも無い行為だったが、無ければ無いで寂しいというか何と言うか。

「…あの、初流乃君、」
「はい?」
「う、ううん。やっぱり何でもない…」
「変な姉さん。早くご飯にしましょう。僕お腹ペコペコなんです」

自分から「抱き締めてくれないの?」なんて聞ける筈がない。私は何を考えているのだろう。


***


夕飯も食べ終わり、今は一緒にソファーに座っているのだが、やはりおかしい。いつもはベタベタと引っ付いてくる筈なのに、何故か今日は指一本だって触れて来ない。今日の初流乃君、凄くおかしい。
もしかして、嫌なことがあったとか?ギャングのボスとは言え、初流乃君だって私と同じ15歳なのだ。何かショックな事があって、それを引き摺っているのかもしれない。

「…ねえ、初流乃君、何か嫌なことでも有った?あ、でもね無理に話して欲しい訳じゃないの。その、ただ、私に何か出来ることがあれば言って欲しいなって…」
「いいえ。むしろ絶好調でした」
「そう…」

違ったか。
では、体調が悪いのだろうか?…いや、それにしては食欲も有ったし、顔色も悪くない。
謎は益々深まるばかりだ。

「初流乃君、今日は何時もと違うね?」
「そうですか?普段通りだと思いますけど」
「なんと言うか…その、雰囲気が違う、と言うか…」

ああ、もう!自分の口下手加減に嫌気が差す。素直に、ハグして欲しい、初流乃君に触れて貰いたいって言えば良いだけなのに!

耐えられなくなって、思い切って初流乃君に抱き付いた。やはり、初流乃君は私に触れることも無ければ、抱き締め返してもくれなかった。それが無性に悲しくて、寂しい。

「姉さん…?」
「初流乃君、私のこと嫌いになっちゃったの?」
「まさか!そんな事は有り得ません。僕は何時だって姉さんを愛しています」
「じゃ、じゃあ…どうして今日はハグの一つもしてくれないの…?どうして触れてくれないの…?」

言ったら言ったで、恥ずかしさで死にそうだ。
やっぱり今の言葉は取り消そうと、初流乃君を見上げると、それはもう嬉しそうな笑顔の彼と目があった。
…もしかして、これを狙っていた…?

「どうして触れてくれないか、
ですって?こうしてナマエから行動してくれるのを待っていたからですよ。たまには、僕からじゃなくナマエから甘えて貰いたいと思って。見事に僕の策に嵌まって下さいましたね?」
「ち、ちがうの…!」
「ナマエは、僕に触れられなくて寂しかったんですよね?そうですよね?」
「いや、あのう…」

何とか弁明しようと良い言葉を探すものの、見付からない。何故なら初流乃君の言う通りだったから。彼に触れられないだけなのに、悲しくってどうにもならなくなる。

「こんなにも可愛いところを見せられては何もしない訳にはいきませんね。覚悟が出来たと捉えて良いのですよね、ナマエ?」
「え、覚悟って…」
「すっとぼけるなんて貴女も意地が悪い。キス以上の事を僕とする覚悟ですよ」

触れられないのは悲しいが、それ以上なんて望んでいないし、ましてや覚悟なんて出来ている訳がない。口を酸っぱくして言い続けてきたが、私達は姉弟なのだ。キス以上―体を交える事なのだろうが―なんて許される筈がない。なのに、初流乃君はその一線を軽々と越えてくる。その度に私は絆されて、どうすれば良いのか分からなくなる。

「初流乃君、私何度も言ってるけれど、」
「姉弟、でしょう?それで何か問題でもあるのですか?僕の愛の前には障害にもならない。僕はナマエを愛している、そしてナマエも僕を愛している。それで良いではないですか」
「良くないと思うよ…」
「ちゃんと避妊しますよ」
「そ、そういう問題でも無くて…」
「それ以上否定的な意見は聞きたくありません」
「そ、そんな…」

ついには抱き上げられ、寝室の方へと歩き出した。精一杯抵抗しても成果は上げられず、ベッドの上へと体を落とされてしまう。
ベッドに横たわる私に覆い被さり、初流乃君は囁く。逃がすつもりは毛頭無い、と。
いっそ彼とこのまま墜ちるところまで堕ちてしまうのも良いかもしれない、なんて考えが過ったのは、彼の熱を孕んだ瞳に見詰められたからなのかもしれない。




これにて完結です。
近親愛ものの独特な背徳感って堪らないです。好きになっちゃいけない人を好きになっちゃってどうしよう、心は痛むけれど愛の素晴らしさも同時に感じちゃうみたいな!みたいな!!!!でもね、好きになった人がたまたま血縁者だっただけなんですよ。
最後はハッピーエンドのつもりです。業を背負いながらも、これからもこの双子はイチャイチャし続けると思われます。

荒木荘サイトの癖にジョルノで中編を書いてしまって、完全に自己満の塊でしか無いと思っていたのですが、それでも読んで下さっている方がいらっしゃってとても嬉しかったです。
ここまでお付き合いして下さった方々、本当に有難う御座いました!//131029
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