「おはよう、初流乃君」
朝、何時ものように弟を起こし、彼が完全に覚醒する前にベッドを抜け出す。先日の二の舞にはならないように、とその対策だ。
彼が起きてくる前に朝御飯を作ってしまおうとキッチンへ向かう。程無くして現れた初流乃君は、寝間着姿で髪の毛も下ろしたままだった。
どうしたのだろう?何時もならリビングに現れる時点で髪もきっちり結い上げ、服だって着替えている筈なのに。
「初流乃君、どうしたの?」
「何がです?」
「その、格好。今日は組織の方に顔出さなくても良いの…?」
「ああ、これですか。それなら今日は休むことにしたので心配要りません。僕が一日居ないくらいで組織が壊滅する訳ではないですし、何か問題があれば電話を寄越せば済む話でしょうから。まあ、実際はポルナレフさん辺りがどうにかしてくれるでしょうけれど」
返ってきたのは何とも投げ遣りな答えだった。現パッショーネのボスがこれで良いのだろうかと言いたくなる(あくまでも言いたくなるだけ)。
だが、問題が起きないように日々初流乃君が頑張っているのは知っているし、確かに一日くらいならばどうにかなりそうではある。
「そういう訳なので、姉さん。今日はずっと一緒に居ましょうね?」
「え、うん。それは良いんだけど、いま朝御飯作ってるから…」
言外に離れて欲しい、と抱きすくめてくる初流乃君に伝えたつもりなのだが、分かっているのかいないのか彼が離れてくれる気配はない。
「朝御飯なんて後で良いんですよ」
「で、でも…」
「良いですから」
これ以上の問答は無用とばかりに手を引かれ、向かった先はリビングに置かれたソファーだった。初流乃君が腰掛け、そして私は彼の足の上に座らされる。ソファーにはまだ人一人分座れるスペースが優に空いているのにも関わらず、 である。
「は、初流乃君、私隣に座るよ…重いと思うから…」
「僕はそこまで柔じゃありませんよ。姉さんは綿のように軽いですし。…それに、僕は少しも離れたくはないんです。こうやって一日中ずっと一緒に居られるのって滅多に無いんですから」
だから僕の我が儘を聞いてください。
耳に息を吹き込まれながら囁かれる。ぞくりとした感覚が全身を駆け巡り、体がカッと熱くなった。
「ふふ、姉さん、顔が赤いですよ」
「は、初流乃君のせいだよ…」
「ええ、そうでしょうね」
初流乃君は悪戯っぽく笑い、私の額と自分の額をくっ付けた。
「…姉さん、好きです。愛しています」
「あ、有難う…私も初流乃君のこと好きだよ?」
腰に手を回されて、強く抱き締められる。隙間も無い程に体が触れ合い、初流乃君の体温を体で感じる。凄く、落ち着かない。
「初流乃君、近くない、かな…」
「いいえ。むしろ僕は、貴女と一つになるくらいにもっともっと近付きたいのですが」
「や、やっぱりもうちょっと離れようよ…」
このままだと不味い。脳が警鐘を鳴らす。
初流乃君の肩を押したけれど、腰に腕を回された状態では意味は無く。反対にその手を取られて、余計に逃げれなくなってしまった。
初流乃君の顔が徐々に近付いてくる。額、目尻、頬の順にキスを落とされ、そして最後に唇にも同じようにキスを一つ。かと思えば、唇を抉じ開けられ、そのまま舌を差し込まれる。
「んん…!」
「ナマエ…っナマエ…」
初流乃君の舌が口内を引っ掻き回し、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を立てる。舌を絡め取られて、全身がゾクゾクした。
何だろう、これ…凄く気持ちがいい。
「…ふっ、ん…」
「ナマエ…舌、」
「んぁ…、」
本当はこんな事しちゃだめだって分かってる。だって、私達は血の繋がった姉弟だもの。でも、気付けば私から初流乃君に舌を絡ませていた。
初流乃君には変態の気があるんじゃないかって常々思っていた。だから、彼に近付きすぎてその性格が伝染ってしまったのだ、と自分を正当化する。
でないと、私も変態みたいじゃないか。そんな自分自身に嫌気が差す。私はこんなにも厭らしい人間だったのかと。口では拒んでいながらも肉欲には逆らえないのかと。
でも、それも今日だけ。今日だけならきっと許されるよね。だから今はこの背徳の快楽に溺れていたい。
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かつてここまで借りてきたお題を生かしきれていないサイトは有っただろうか。
まさかの変態移った後です。百合っぽくしようと思ったのですが、駄目でした。//131025