TEXT | ナノ
(注)相変わらずプッチがド変態の別人状態です。
露骨な表現の下ネタも普通に出てきますので、苦手な方はご注意ください。

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「どうかしたかい?随分苛ついているじゃあないか」
「まあ誰かさんに呼び出されればそうなるだろうな」
「ふうん、誰だろうね」

てめえだよ。白々しい反応しやがって。
そういえば、このG.D.st刑務所にやって来た初日にもこんな風にこいつに呼び出されたっけなあ。


***


「いくつか質問していくから、それに答えて貰えますか」
「…はあ、」
「くれぐれも嘘はつかないように」
「分かったからさっさと始めてくれませんか」

エンリコ・プッチの第一印象は『神父らしくない男』だった。物腰は柔らかいし、人を包み込む優しさも持っていて、一見すると聖職者に相応しい人間かもしれない。だが、何処かおかしいのだ。言葉では上手く言い表せられないが、――歪んでいる、というのが一番近いだろうか。兎に角、あまり関わりたくないタイプの人間だった。

何の罪も犯していないのにこんな刑務所にぶちこまれ、挙げ句胡散臭い神父野郎に呼び出され、私の怒りのボルテージはMAXまで来ていた。さっさとこの下らない質問とやらを終わらせて自分の独房で眠りにつきたい。

「君の名前は?」
「…ナマエ」
「ナマエ、君はどうして此処に入れられた?」
「さあ。殺人を犯したらしい」
「"らしい"?まるで他人事じゃあないか」
「実際他人事だよ。私は何の罪も犯しちゃあいない」
「嘘はつかないようにと最初に言わなかったか?」
「そうだったかしらア?すみません、忘れました」

やっぱり信じては貰えないか…。
そんな事、この刑務所に来た時に分かっていた筈なのに。なのに、やはり信じて貰えないとなると辛いものがある。
此処の連中は人を人として見てくれない。きっとこの神父も、綺麗事をほざくだけほざいて中身はあいつらと同じなのだ。反吐が出る。

「もう質問が無ければ帰っても?」

椅子から立ち上がろうとした私を、プッチが「まだだ」と引き留めてくれたお陰でまた椅子に逆戻りだ。さっさと解放して欲しい。

「誰が終わりだと言った?まだ終わってはいないよ」
「じゃあ早くしてくれませんか」
「そうしよう。ではナマエ、今まで付き合った男は?」

……は?

「おいおいおいちょっと待て!そんな事まで答えなきゃならないのか!?」
「勿論。それで、答えは?」

神父の澄んだ瞳が私をじっと見つめてくる。答えるまで帰さない、と無言の圧力を掛けられているようだ。

「チッ…一人…」
「まだ関係は続いているのか?」
「とっくに終わったよ」
「何故?」
「…っ、私は二番目の女だったんだと!つまりはあのクソ野郎の浮気だよ!捨てられたんだ!これで満足か!?」
「ああ、とてもね」

何なんださっきから!人の恋愛遍歴を聞いて何の特になるって言うんだ!?それともこれが普通なのか!?神父と話した事なんて無いから分からない!

「体を交えた事は?」
「〜っ、無い!」
「では処女か」
「…人間相手は」
「人間相手?」
「…それも言わなきゃ駄目なの」
「私は君の罪を軽くも出来るし、重くも出来るんだよ?」
「わかった!言う言う!」

嘘だろ、この神父!脅しかけてきやがったよ!!

「…そ、その…彼氏が処女は面倒だって言うんで、バイブ使って自分で……ああああ!何て事言わせるんだ馬鹿!!」
「いいね、そそるよ…」
「は!?」

おい、今なんて言った…?神父の口から漏れちゃならない言葉漏れなかったか!?

「質問はこのくらいで結構。もう帰って貰っても構わないよ」

にっこり。やたら良い笑顔を浮かべてプッチは私に立ち上がるよう促した。
気持ちの悪い質問を投げ掛けてくるわ、居ろと言ったと思ったら今度はさっさと帰れだなんて、何て身勝手な神父だ。

…否、これで帰れるのなら此方にとっても好都合じゃあないか。さっさと帰ってもうこの神父とは極力関わらないようにしよう。

「あ、そうそう。言い忘れるところだった」
「…まだ何か?」

「君に殺人罪の罪を被せ、この刑務所へぶちこんだ人間だけど…あれ、実は私なんだ」


***


…ああ、駄目だ。思い出しただけで腹が立ってきた。あの後、プッチに殴りかかったお陰で危うく懲罰房行きになりかけたんだよなあ…。プッチが止めに入ってくれたから難を逃れたものの、そもそもの発端はこいつなのに。やはり囚人の言葉は信じて貰えないのだ。

「ナマエ、今度はぼーっとしてどうしたんだい?」
「ちょっと考え事。アンタと会ったときの事思い出してた。思えばあの時からヤバい奴だったなーって」
「ああ、そういう…確かに私も君をはじめて見たときはヤバかった。主に下半身が」
「ほんと最低だな。割りとまじで死んでくれないかと思うよ」



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もうちっとだけ続くんじゃ~130118
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