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※学パロ。承太郎が教師設定です。変態で気持ち悪い太郎なので、十分ご注意ください。兎に角キャラ壊れが酷いので、いつものかっこいい承太郎が好きな方にはオススメ出来ません。


私には熱狂的なファンが居る。
四六時中何時でも何処からでも熱い視線を向けてくれ(授業中は勿論、それ以外の時間でも)、休み時間になると直ぐ様私の席へと飛んできて、女子トイレにだって入ってこようとする(勿論無理なので出入口で張り込んでる)、そんな男だ。おまけにイケメンだし、高身長で頭もいい。申し分無く"イイ男"ってやつだ。その証拠に女子生徒や女性教員からの人気は相当なもの(そして一部の男子生徒や教員からも)。何処ぞのアイドルグループも人気の若手俳優も目じゃない。今や彼の隠し撮り写真は高値で売買される程だ。

…ただ、欠点が一つあるとすれば、コイツがファンなんて生温い言葉では片付けられない程にストーカーだってこと。

今日も今日とて私のファン、もといストーカーの空条承太郎に追いかけ回されている。後ろから「どうして逃げる」だとか「掴まえたらヤっていいのか」だとか「こんなに愛しているのに」だとか不穏な言葉が聞こえてくるけれど、それをまるっと無視して廊下を走り抜ける。私は走っているのに、相手は歩いて追いかけてくるのが更に恐怖を煽ってくる。

「…ナマエ、俺は追い掛けるより追い掛けられる方がどちらかと言うと好きだ」
「いやだから何だよ!!!?」

追い掛けて貰いたいのなら、別の女子高生にして貰えよ!!私以外の生徒なら喜んで追い掛けてくれるだろうよ!現に私の友人も「空条先生の尻追い掛けたい」って言ってたからね!!?

「あーもう!!来ないでくださいよ!!」
「それは無理な相談…ってやつだな」
「くそ!イケメンなのがまたむかつく!」
「誉めても何も出ねぇぜ」
「誉めてねえよ!!」

何とかあの変態馬鹿教師を撒かなくては…!
おちおち家にも帰れないじゃあないか。空条承太郎が居るこの世界で唯一安心できる場所だと言うのに!


***


それから何とか空条先生を撒くことに成功し(撒くのに30分もかかってしまった)、漸く落ち着ける我が家へと帰ってきた。
此所ならば空条承太郎という名のストーカーも居らず、何処からともなく向けられる熱い視線に晒されることも無い。

「ただいまー。お母さん聞いてよー!今日ほんと疲れちゃ…った……」

リビングの扉を開けてものの数秒で、私の楽園(と書いてエデンと読む)が壊れるだなんて誰が想像できただろうか。否、想像出来まい。だが実際に起こった。
私の安息地は、またもや空条承太郎によって壊されることとなったのだ。

「あらナマエ、おかえりなさい。空条先生が忘れ物を届けてくれたのよ」
「邪魔してるぜ」
「嘘でしょおおお!!?」

空条先生が私の家へ上がり込んで母親と仲良くお茶を飲んでいる。最悪だ。恐れていたことが起きてしまった。て言うかどうして私より早く此処に居る!
住所も電話番号も学校に割れているし、何時かは家へ上がり込んでくるんじゃあないかとずっと危惧していた。ただ、それがこんなに早く現実になってしまうとは。しかも恐れていたよりもっと残酷な形で。

「お母さん!どうしてこいつを家へ上げたの!?信じられない!わざわざお茶まで出して!それ勿論毒入りよね!?」
「ナマエ!先生の前でなんてこと言うの!!」

「すみません毒なんて入ってませんから」とテンパっているのか変な謝罪を繰り返して平謝りする母と、「いえ、元気があって良いではないですか」と素晴らしい教師を演じる空条承太郎。
クソオオオオオお母さんが面食いなばっかりに空条先生のおかしさに気付いてくれない!!今だってまるで私を舐めるような目で見てくるのに、お母さんは空条先生のカッコいい顔に見惚れてて気付いていないんだから!

こうなったら自分で何とかするしかない。どうにかして先生を追い出さなくては…!でなければ此処は楽園ではなく、失楽園になってしまう!(自分では上手く言ったつもりだけど、よく考えたら最悪のネタだわ。意味通ってないし)

「…先生。用が済んだならさっさと警察へ出頭して下さい」
「ナマエ!いい加減にしなさい!先生はあなたが忘れたノートをわざわざ届けてくれたのよ!」
「ノート……?」

えっ忘れ物ってそれ?
まさか、本当にそれだけの為に"わざわざ"生徒の家へ訪れたというのか。たかがノート一冊の為に。

「ノートの為だけに来るのっておかしくないですか」
「…いや」

おい、何故目を逸らす。

「先生のご好意で届けて下さったのよ。ちっともおかしくなんかないわ」
「お母さんは騙されてる!だってよく考えてよ!!ノート忘れたからって持ってくるのはおかしいでしょ!明日学校で返せば良いだけの話なんだから!」

味方が居ない状況というのはやはり厄介だ。お母さんにはさっさと目を覚まして貰って、空条先生を追い出す手伝いをして貰わなくては。今の私の言葉で少しずつだけど、懐疑心を抱き始めてくれたみたいだし。
しかし、空条先生も馬鹿ではない。そうはさせまいと言い訳を始めた。

「…ナマエが課題を出来ないと思ってな」
「ルーズリーフに書いていくから別に大丈夫ですし!」
「…ルーズリーフ禁止だ」
「はあ!?そんなの聞いてない!」
「今言った」

なにそれズルい!!

「…ほら、ノートだ」

ずいっと差し出されたノートは何故か表紙がカピカピになっていた(お母さんは気付いていないのか、明らかにおかしいそれに突っ込んで来ない)。もうその時点で泣きそうなのに、極めつけは中を開くと何頁にも渡り赤ペンで繰り返し書かれている『愛している』の文字。
そっとノートを閉じた。このノートはお寺に持って行って供養してもらおう…。

「……じゃあ先生、ノート有難う御座いました。さっさと帰っ、」
「ん?何だ?部屋に来て欲しいって?仕方ないな…本来なら生徒の部屋へは行かねえんだが…。お義母さん、構いませんか」
「ええ、どうぞどうぞ」

どうぞじゃないよ!!!何言ってんだ!!懐疑心捨てるの早いな!?変態を私の部屋へ上げるとか正気の沙汰じゃない!!いくら空条先生がイケメンだからって普通そこまで騙されるか!?て言うか今お義母さんって言わなかった!!?

「お母さん何言って…むぐっ!」

先生の大きな手で口を塞がれた。…クソッ、コイツ何がなんでも私の部屋へ上がる気だ!!

「ナマエ、案内してくれるな?」
「んー!んんー!!」
「してくれるんだな?…なあ?」

ワントーン下がった先生の声はどう聞いても堅気っぽくない。つまり、ドスがきき過ぎてて兎に角怖い。それはもう私の意思をくじく程度には。
『先生を追い出して警察に引き渡す』という目標をポッキリと折られた私は、空条先生に肯定すべく必死で頷いた。お母さんが「先生に可愛がって貰って良かったわねえ」と呑気な事を言っているがそれどころじゃあない。あなたの娘、悪い狼に脅されてるんですよ!!


***


結局、私の部屋へ空条先生を上げることになってしまい、部屋まで案内することに。

「…私の部屋は階段を登って、」
「確か一番奥だったな?」

おいちょっと待て。何故知ってるんだこの野郎。
私が教えた覚えはないし、お母さんだって教えてはいないだろう(多分)。じゃあ忍び込んで……いや、詮索するのはもう止そう。知らない方が幸せな時もあるのだから。


「…此処がナマエの部屋か…初めて入る」
「でしょうね」
「良い匂いがするな。肺に溜めておきたい」
「先生息するの禁止ね」

空気に飽きたらず枕の匂いまで嗅ぎ始めた変態教師を取り敢えずクッションで殴っておいた。
しかし、それにめげるでもなく懐からビニール袋を取り出した空条先生。何がしたいのか意味不明だ。まあ変態の行動など常人がそう分かるものではないが。

「…何してるんですか」
「ビニール袋にナマエの部屋の空気を入れて持ち帰る」
「………」

プチ。ビニール袋に針で穴を開けてやった。
怒れば良いのか悲しめば良いのか、しかも私に当たる訳にもいかない空条先生は(私に嫌われたくないからだ)、自分の下唇をただ噛み、血をだらだらと流して自分の感情を抑えていた。今世紀断トツで顔が怖かった。

だが、ここで引くわけにはいかない。
二人っきりにさせられてしまったのは仕方の無いことだ。ならばそれを最大限に利用してやるのだ。良い機会だからキッパリと言ってやろう。空条先生にもうストーカー行為は止めてくださいと。

「…空条先生、お話があるんです」
「何だ、改まって。もしかして…」
「ええ、そうです。スト、」
「婚約指輪は給料の三ヶ月分だったな。安心しろ。もう買ってある」
「一階と二階で話すのはもうやめましょう。誰が婚約すると言った。ストーカー行為を止めろと言いたいんです」
「ストーカーだと…?お前、ストーカーに狙われていたのか?俺に任せろ。そいつを殺してやる」
「おいまじかよ」

何を隠そう、ストーカーお前だよ。

「先生。非常に言いづらいのですが……、ストーカーてめぇだよ」
「俺だと…?」
「ええ」

そうです、そうですとも。だから今懐に入れた私の使いかけの消しゴム出せよ。それ持って帰ってどうする気だ。

「来る日も来る日も私を追いかけ回し、挙げ句に家まで押し掛ける。これの何処がストーカーでないと?」
「俺はお前のカレシってやつだぜ」
「こんな一方的なクレイジーカレシが居てたまるか。…兎に角。これ以上ストーカー行為を続けるなら、先生のこと嫌いになりますからね」
「…!!」

この言葉は効果覿面の筈だ。私に嫌われると生きていけない先生は即刻ストーカー行為を止めてくれる…だろう恐らくは。我ながら人の弱味につけ込む何て頭の良い作戦なんだろう。

「本気…なのか…?俺はナマエに嫌われたら生きていけない…」
「ええ、でしょうね。だから言ってるんですよ」
「…もう此処へ来なければ嫌わないで居てくれんのか…?」
「それと追いかけ回すのも無し」
「目で追い掛けるのは…?心のメモリーに刻むだけだ」
「目抉るぞコラ」
「…分かった。止めよう」

帽子の鍔をキュッと下げ、先生は私が提示した条件を飲んでくれた。先程の嬉々とした様子の先生とは違い、まるで脱け殻のようになった先生を見ていると少し罪悪感が沸くが、ここは心を鬼にして貫く。後々の自分の為なのだ。

「…ただ、今だけは許してくれないか。今だけで良い」
「まあ……今だけなら…」

心を鬼にしたとは言え、私もそこまでは鬼になったつもりはない。今だけならば私を見ることを許してやっても良い。消しゴムだって餞別としてくれてやろう。

「ナマエならそう言ってくれると思った」
「…なに顔近づけて来てんですか」
「今日だけは許してくれるじゃあなかったのか?」
「だからってキスはどうなんでしょうね〜。そこまでやりますか普通」
「極力優しくする。舌は入れないと誓う」
「あ、話聞いてねえなコイツ」

確かに今日だけは許してやると言ったが、これは些か調子に乗りすぎだ。
こんなことも有ろうかと対・空条承太郎用に用意していた一升瓶で後頭部を殴ってやった。
空条先生が完全に意識を飛ばして倒れたのを確認し、私はスマホを取り出してある人物に電話をかける。その人物は2コール後にすぐに電話に出てくれた。

「……あ、もしもし、花京院先生?…うん、そう、粗大ごみが出たから"また"処理をお願いします」

(14/05/11)
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