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帰宅して早々、ナマエの元へズンズンとやって来たカーズはいの一番にこう宣った。

「ナマエ、このカーズから離れるとはどういうことだ!!」

これにはナマエも呆れ果て、言い返す気力も失せてしまった。ナマエにはナマエの生活があるし、ずっと部屋に閉じ籠ってカーズと過ごす訳にはいかない。カーズが着いてくるというのなら話は別だが、それを許すほどナマエも甘くはなかった。

「…はいはい、すみません。もう離れませんから」
「このカーズとお前の心臓は繋がっているも同然なのだぞ!?それなのに俺から離れるとはどういうことだ!?」

ナマエは一度大きく息を吐いてから右手をチョキの形にして、丁度心臓の前で人差し指と中指を開いたり閉じたりした。カーズは訝しげにナマエのその動作を見てただただ首をかしげる。ナマエの突然の奇行の意味が分からずにいたのだ。

「…?なんだ、それは…どういうつもりなのだ…」
「良いですか、カーズさん。これは鋏です。だからこうやって、私とカーズさんの繋がっている心臓を切り離してるんですよ。これで少しなら離れてても大丈夫でしょう?」

チョキチョキ、と効果音を付け空を切る動作を繰り返すナマエ。それにはカーズもぎょっとして咄嗟にナマエの腕を掴んだ。

「や、やめろ!俺はお前と繋がっていたいのだ!!切ったらナマエを殺すからな」
「私の心臓が止まったら、この心臓を繋いでる糸だって切れちゃってカーズさんと離れられるでしょうし、それでも構いませんよ」

さらりと言い放たれた言葉にまたもやカーズはぎょっとした。離れては元も子も無いのだ。カーズはナマエと一時も離れないで居たいのだから。

「…や、やはり殺すのは止めておくか…このカーズから離れたら痛い目を見せるだけに留めておく!」
「はあ、」

何処から持ち出したのか仰々しい手枷を取り出したカーズを見遣り、ナマエは上手く逃げ出す算段は無いものかと思考を巡らせるしかなかった。


(14/12/9)
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