▼ 隠された大陸 (11/11)
エルフ達が居なくなった後、フェーンは嫌々という雰囲気を隠そうともせず、いらただしげに溜息を吐いた。
「……それで、こんな辺鄙な土地まで僕になんの用ですか?」
「それより、良いのかあいつら。怒ってたみたいだけど」
「ああ、良いんですよ。いつもの事ですから。ところで、それ、どうやって手に入れたんです?」
「えっ?」
いつもの事だと吐き捨てたフェーンは、そんなことよりとロランを、いやロランの上着の内ポケットに入っている物を見つめる。
「ああ……知り合いのエルフに貰ったんだ。これのおかげで隠されてたこの大陸を見つけることが出来たんだ」
「なるほど、確かにそれはこの大陸生まれの者達ならば誰しもが持っている証のような物です。ここの人達は極めて外部との関わりを嫌いますからね……ですが、それでもおかしい」
フェーンは睨むように、ロラン達を見回していく。
「この森への道を開くにはそのチャームと、この大陸の血縁者が必要なのです。しかし、見た所貴方がたの中にここの言葉を理解する者も、エルフも居ない。では、どうしてですか?」
フェーンの問いに此処に来た経緯を思い返す。
森への道が開けたあの時、チャームを持っていたのは誰だ?
「まあ、立ち話もなんでしょう。この先に僕の家があります。お招き致しますよ」
フェーンの提案が、ロランの思考を遮る。
彼は右腕をゆっくりと上げ、パチンと指を鳴らした。
瞬間、此処へ来た時のように木々が動き出し、新たな道を作り出す。
「貴方達を迷わせるようエルフ達がかけていた術を解きました。この先です、どうぞ」
そう言って、フェーンは新たに現れた道を歩き出す。
思いのほか彼の足は早く、少しよそ見をすれば置いて行かれそうだ。
早く着いていこうと、仲間達の方を振り向いたロランはそこで一人の様子がおかしい事に気付く。
「ラック?どうした?」
「……この匂い、なんで?なんで……」
「ラック……?あ、おい!?ラック!?」
ロランの制止も聞かず、ラックは一目散に走り出す。
それもフェーンが進む道の、全くの逆方向へ。
ラックを追い掛けようと一歩踏み出すが、フェーンはなおも振り替えることなく歩き続けていた。
「ったく、どいつもこいつも!」
「ロラン!僕も思うところがあるんだ、ラックについて行くよ!」
「ティールだけじゃ不安だからあたしも付いていくわ!そっちは4人でよろしく!」
「ああ、ありがとう!任せた!」
ティールとレイムがラックが消えた方向へ走り出す。
ラックのことは2人に任せ、ロラン達は既に小さくなっているフェーンの背中を追い掛けた。
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