想い出のキセキ | ナノ


▼ 隠された大陸 (10/11)

「ま、こう開けた場所だったから、こんな荒技が出来たんだけど」

木片が舞い散る中、魔法を発動させた本人はほおっと息を吐きながら、肩にかかった長い髪を払う。
もう何かが襲ってくる気配は無かった。

「何だったのよ今のはー!」

気だるげに手元の鎖を振り回しながらレイムが叫ぶ。

「考えられるに侵入者の排除って所かな、僕達は余所者だからね……そうなんだろう?」

ルースの視線の先、深い木々の中に紛れた二人の人影はびくりと身を震わせた。
意を決したのか、草を掻き分ける音と共に人影が姿を現す。
蜂蜜のような金髪の男と女だ。
その鋭く細められた碧眼と、髪から覗く長い耳は、彼らがエルフの一族であることを示す証であった。

「あんたらが、この大陸に暮らすエルフなのか……?」
「ーーーー!ーー!!」

ロランが問いかけるが、返ってきた答えは聞き取れない謎の言語だった。
何百年も交流を絶っていたのだ。
全く違う言語が浸透していても不思議は無いが、これでは堂々めぐりである。
さらにエルフの二人はやたら興奮しているようで、ただひたすら何かを叫んでいた。
あまり事を荒立てたくは無かったが、最初からこれでは意味が無い。
なんとか意思を交わす手立ては無いものか、そうロランが考え始めた時

「“何処から来た人間、どうやってこの森に入った”……彼らはそう言ってますね」

何処からか、妙に通る声が聞こえた。
見遣れば、二人組の後ろ、いつの間にそこにいたのかもう一人の人影が立っていた。
深緑のマフラーをはためかせる彼もまた、癖の目立つ金髪から先の尖った長い耳を覗かせていた。
だが、それよりも目に付いたのは

「子供……?」

彼の背丈はラックより一回りも小さかったのだ。
ロランの呟きを耳聡く聞き取ったエルフの少年は、怪訝そうに眉をひそめる。

「僕は子供ではありません。訂正お願いします」
「ーー!フェーン!!ーー!!?」

第三者の登場に驚いていたエルフ達は、しかしそれが彼であると解るや否や、怒りに顔を歪め、少年を咎め出す。
その言葉の中に、確かに『フェーン』という名を聞き取った。

「待った!お前がフェーンなのか?!研究者の!」
「……ええ、確かに。僕がフェーンですが」
「ーー!?ーーーー!!」

少年ーーフェーンは隣で叫び続けるエルフ達には無視を決め込んだようだ。
彼らが咎める内容には一切答えず、ロランの問いに返答する。
そんなフェーンの様子に怒りが頂点に達したのか、エルフの二人は最後に大きな声で吐き捨てると、森の奥へと消えていった。

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