▼ 隠された大陸 (5/11)
しばらく海原を渡り、船はゆったりと動きを止める。
操舵室で古代の地図を睨みつけながら舵を取っていたティールは軽く唸り顔をしかめた。
目の前に広がるのは、ただ真っ青な海のみである。
「ううん……この辺のはず何だけどなあ」
もう三度目か、再度地図を確認する。
しかし、いくら睨みつけようが、隠された大陸が現れる訳でもない。
ティールは肩を落とし、深い溜息をついた。
亜麻色の尻尾が彼の動きに合わせ虚しく垂れる。
――トントン、
と、操舵室の扉を叩く音が耳に入った。
船室で休憩していた誰かが、船が止まったことで様子を見に来たのだろう。
近くにいたラディに舵を頼み、扉を開ければ、案の定怪訝そうな顔つきのロランが立っていた。
「どうかしたのか?」
「ああ、うん……着いたには着いたんだけど……」
見つからないんだ、そう言う前にロランはティールをすり抜け、操舵室の窓際に駆け寄っていく。
信じられない、といった様子のロランにどう声をかければいいのか解らず、ティールは焦りながら彼を追い掛けた。
「あー……えっと、その……また探してみるよ、だから……」
「……すごい」
「元気だし……って、え?」
想像していた物と違う彼の反応に、恐る恐る顔を覗き込む。
彼は、まるで目の前に不可思議なことが起こっているかのように、爛々と目を輝かせていた。
「なんだあれ……大陸が浮いてるみたいだ……魔法、なのかな……よく解らないけど」
「え、あの……ロラン?」
「ティール……ひょっとして見えない、のか?」
そう言って、ロランは眉根を寄せる。
彼には何か見えているのだろうか。
「な、何も見えない……ただの海しか……ラディは?」
「いや、俺も何も見えてないぞ……」
頭がこんがらがってきた。
一体、ロランは何を見ているというのか。
ロラン自身もこの現象については解らないらしく、困惑気に眉を潜めている。
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