想い出のキセキ | ナノ


▼ 隠された大陸 (3/11)

いざ、エルヴァニアへ!
と気前よくギルドを飛び出したものの、ロラン達は港で立ち往生していた。
なにせ、現代の地図にはない場所へ船を運べ、というのだ、受け入れてくれる船がありそうもない。

「どうするかな……」

以前も似たような事に見舞われた気がする。
あれは確か、レイムと初めて出会った時のことだ。
あの時は丁度、ティールという船乗りの息子がイヴェルナまで運んでくれたのだが、今彼らは、彼ら自身の為世界中を船で巡っていることだろう。

「……あれ?あの後ろ姿、見かけたことないかな?」
「……本当だ!戻って来てたんだ!」

ティール達がサディラに戻っている、なんてそんな都合のいいことなどあるはずがない。
やはり、無理にでも港の人に話を付けて、船を貸してもらわなくては…。

「……ちょっと、ロラン?聞いてる?」
「……えっ?な、何?」

レイラに肩を叩かれ、顔をあげる。
見れば不機嫌に顔をしかめた彼女と、その奥でルースやラック達に囲まれ楽しそうに談笑を交わす、猫のような風貌の少年。

「……って、あ……あれ?!ティール?!」

そう、まさに、旅に出ているはずのティールが、そこにいて笑っていた。
声を上げたロランに気づき、片手を振りながら笑う。

「え、えーと…!!久しぶり、帰って来てたんだな」
「うん、なんか急に帰って来なくちゃならない気がして。せっかくだから船はラディ達に任せて僕はギルドの方まで来てみたんだ」

そしたら君達の姿を見かけたんだと、ティールはふにゃりと笑う。
そのあと、旅の成果はどうだったか、と聞いたが、あまり芳しくはなかったらしい。
ティールは冷や汗を流しながら苦笑を漏らす。
フィリアがしこたま不機嫌なんだとか。

「……あのさ、頼みたい事があるんだ」

ティール達が今サディラにいる。
これは、逃してはおけないチャンスかもしれない。

「エルフの里まで船を出してくれないか?地図にも載ってない場所だし、無理だったら構わな……」
「うん、いいよ」
「いんだけど………って、え?」

呆気なく得られた了承の言葉に、思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
ティールは、ああ、そっか……と何かしら呟くと、申し訳なさそうに付け足した。

「実はさ僕らも君達にお願いがあって」
「お、おう……」
「僕達を……僕達の船を、君達の足として使って欲しい」

ティールは真っ直ぐに、ロランを見る。
その瞳には、確かな決意がこめられていた。

「実はさ、ずっと考えてたんだ……というよりそんな感じがしたんだ、僕達の船は君達の為にある。僕らの旅の目的も君達に協力すれば果たせられる。……根拠も何も無いんだけどさ」

ティールは先程の決意に満ちた表情とは打って変わって弱気に目を伏せる。
そんな彼をロランは肩を叩いて元気づけた。

「いや、ティール達がいいなら是非そうして欲しい。こっちだって願ったり叶ったりだし、お前らが付いてれば心強いしな」
「……」
「……どうした?」

何故か不思議そうな面持ちでこちらを見つめるティールに首を傾げる。

「いや、最後に会ってからそれほど経って無いのに、ロラン変わったなって思って」
「俺が?」
「うん、何て言うか……落ち着いたっていうか、大人になったっていうか……リーダーって感じがするよ」
「……そっか、ありがとう」

確かに、自分は昔と今では変わったはずだ。
もう無理して笑う必要も無いのだから。
そのうちティール達にも話さなきゃな、とそう思った。

「じゃあ早速向かおうか!船はあの時と同じ港に停まってるから」

ティールが大きな声をあげる。
ああ、とロランは頷いた。

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