想い出のキセキ | ナノ


▼ 隠された大陸 (2/11)

3階に上がってもなお、1階の喧騒は僅かながらも聞こえてきた。
それでも話せない程度ではない。

「空のアレは、知ってるかい?」

メニリナの問いに、こくりと頷く。
自分達が急いで帰って来た理由も、それが関係しているのだから。

「おかげでさっきからあの調子さ。全く……いくらエリィさんでも知らない事もあるって言うのに」
「あの、俺達は……」
「……知ってる。だからあんたたちに頼みたい事があるんだ」

頼みたい事?
首を傾げるロラン達の目の前で、メニリナは古ぼけた紙を広げる。
それは、年期が経った地図だった。

「……この地図、ところどころ今の地図と違う部分がありますけど……」

地図を覗き込んでいたルースが、躊躇いがちに顔を上げる。
メニリナは一瞬だけ目を見開き、含み笑いを漏らした。

「ほぉ……よく気付いたね。そうさこれは、もう100年以上も前……まだ人間とエルフの間に親交があった時の物さ」
「ひゃ……100年?!」
「私は祖父からこれを譲り受けてね、使う宛てもなかったから今まで仕舞っておいたんだけど」
「どうしてそんな物を私達に……?」

訝し気に声を上げるレイラに、メニリナは頷き、答える。

「この古地図にしか載ってない場所……エルフの里“エルヴァニア”に行って欲しいんだ」
「エルヴァニア…?」
「その場所に『フェーン』っていうエルフがいるはず。そいつに会ってやくれないかい?きっと、あの裂け目について何か知っているはずだから」

やっと話が繋がった。
フェーン、という人物は影ながら世界の魔法学事情を支える、エルフの中では著名な研究者らしい。
知らない物事があるのが許せない性格で、きっとこの不可解な現象にもいち早く対応し、何か掴んでいるだろう、というのがメニリナの見解だった。

「でも、エルフの里に人間の俺達は入れるのか?」
「ああ、それなんだよねえ……あいつらは生真面目で気難しい。……上手くいくかは解らないけど、これをあいつらに見せてやれ」

そう言って、メニリナは何やら小物を取り出す。
緑に輝く宝石に、綺麗な青色の紐飾りがくくりつけてあった。

「里産まれのエルフなら意味が解るはず。……すまないねえ、本当は私が行ければいいんだけど」
「いいって、ギルドの方も大変なんだろ?直前までギルドにいなかった俺達なら動きやすいしな」

メニリナからチャームを受け取り、ニッと笑ってみせる。
こっちだって、ギルドで質問攻めにされる日々なんて御免だ。
気前のいい返答に、メニリナは満足そうに微笑んだ。

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