カータリアの下宿人 のコピー | ナノ


▼ 私は…ええと何でしたっけ? (3/7)

あまりの光景に、その場で膝を付く。
アルアは?コテツは?コハクは?ディーンは?メティロスさんは?
見知った下宿人達の顔が次々と浮かんでくる。
振り払おうとも、最悪の想定は僕の頭から浮かんで離れない。
ああ、なんとでも言え、僕はネガティブだ。

先程叫んでから言葉を発っせないでいる僕の耳に、崩れた床の板を除ける音が響く。
誰かは分からないが、無事だったみたいだ。
とりあえずホッと胸を撫で下ろし、その場に近寄る。が、

「……痛ったたー…大変な目にあった…」

物音を立て、身を起こしたのは、長身の男。
薄めの金髪で、瞳は碧い。
まあここまでは普通だ。
ばさあ、と風を切る音とともにそれは数回羽ばたかれる。
それ、だ。
男の背には白い翼があった。

「…ん?どなたですか?」

じっと見つめる僕の視線に気付いたのか、男は僕を見上げ首を傾げる。
僕は別に男の背中にあるものに驚いている訳じゃない。
まあ確かに珍しいは珍しいが、この国の住人に、翼を持つ人なんてたくさんいる。
僕が驚いているのは、そいつの顔も姿も見たことがなく、もちろん名前も知らないことで。
つまり、こいつはカータリアの下宿人じゃない訳で。

「誰だあんた!!」

「はあ?!」

僕の人生の中で、後にも先にもこれ以上ないくらい失礼な第一声であったと反省しよう。

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