「はい?今、何て?」

≪だから!今日、跡部が来てんだよ!全員集合なんだよ!≫

「全員集合って…てか、べー様が?」


跡部もとい、べー様もとい、跡部景吾。
岳兄の部活の俺様部長さん。金持ちの坊っちゃん。
岳兄の家には滅多に来ないのに今日に限って何故…?


≪跡部に太刀打ち出来るのは名前だけなんだ!だから今すぐ来い!≫


そう言って岳兄は電話を一方的に切った。ひどい。朝話したよね?侑士の話。気まずいって言わなかったっけ?気にするな、みたいな事は言われたけど。
でもさすがに朝から夕方までの間に気持ちの整理がつく程大人じゃない。
朝、みんなと遭遇しないように学校に行って、少しでも侑士を意識しないように努力して、でも努力も虚しく頭の中は侑士で一杯だったから。
だから今日は岳兄の家には行かない事に決めたのに。
岳兄の馬鹿!いや、跡部の馬鹿野郎!この前来た時「こんな狭い部屋で馴れ合うなんて俺様には分からねぇ。なぁ樺地」とか言ってたじゃん。何で来んだよ。しかも今日。
行かなきゃ良い話だけど、行かなかったらきっと、しつこく電話来る。代わる代わるみんなが電話を寄こすような気がする。
はぁ…足が重い。それでも岳兄の家に歩き出してるは偉いと思う。あんまり仲が良いのも考えもんかもしれない。今更な話だけど。
せっかく落ち着いたと思ったのに、また胸がドキドキし始めた。

ドキドキが治まる前に着いてしまった岳兄の部屋の前でとりあえず深呼吸をする。もう。家が隣だからドキドキを治める暇もなかった。でも着てしまったもんはしょうがない。よし…行くぞ。


「どらぁーーー!跡部ぇ!」


バタンッ、と勢い良くドアを開け部屋に入ったら驚くメンバー。あ、本当に全員集合してる。


「アーン?威勢が良いじゃねぇか。小娘」


部屋の一角で優雅に座り込んでるべー様。隣には樺地君。


「名前!待ってたぜ!」


ピョンピョンと岳兄が嬉しそうに近付いてくる。可愛いけど今日は許せない。許してやんない。とりあえずスルーしてやる。


「何で来たの?べー様」

「文句あんのか?アーン?」

「大ありだっつーの!バカ!」


アンタが来なかったら私は呼ばれなかったはずなんだよ。


「…さすが、名前だな」

「跡部さんにも物怖じしないですね」

「名前恐いC〜」

「いつもの事じゃないですか。ですよね。忍足さん」


長太郎が居て楽しそうな亮。起きてるジローちゃん。そして話を振る相手を間違えてるピヨ。もう!ピヨのバカ!今、一番聞きたくない名前なのに。


「せやな。名前はいっつも元気ええもんな」


心臓がドクリって鳴った。声聞いただけで、名前呼ばれただけで、心臓がうるさい。顔なんかまともに見れないよ。


「か、樺地君も大変だね」


思いっきり逸らしちゃった。みんなは知らないのに不自然じゃないか。でもいつも通りなんか出来ない。
チラッと申し訳なさそうにしてる岳兄の顔が見えたけど、そんな顔しても遅いんだから。もう…静まれ。心臓。




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