あ、まただ。トントンと頬に感覚。目の前には微笑む侑士。
でも隣にはジローちゃんが寝てたはず。これは昨日と同じ夢だ。また同じ夢をみるなんて性質が悪い。
眠い頭を働かせて考えを巡らせる。そして早く目を覚まさないと昨日と同じ展開になってしまうという結論に達した。
「おはようさん」
「ん、ゆー、し」
「開口一番、名前呼んでくれるんか」
会話してる場合じゃない。侑士は目を細めてにっこりと微笑んでるし。夢って案外融通利くんだ。思った事、口に出せちゃうし、ストーリー展開自由自在なんだね。
完璧に起きてない頭を覚醒させようと必死だった。またキスする事になる前に目を覚ましたい。
「やっぱ、可愛ええやっちゃな」
言葉と同時にぎゅっと抱き締められる感覚。まずいよ。この状況は。侑士の顔がさっきより近い。
「名前…」
「んっ」
やっぱり同じ展開になってしまった。唇に柔らかい感覚と伝わる熱。しかも今日は長い。
侑士の舌が唇を割って口内に侵入する。
「んっ、ふっん」
昨日よりも激しくて苦しい。苦しい…。苦しい?
ねぇ。私、完璧に目が覚めてるんだけど。
「んっ、はっ」
「ちゃんと息せな。苦しいやん」
問題はそこじゃないんだけど。
「なん、で…」
頭がジンジンと痺れて変な感覚。さすがに夢じゃない。
「名前が可愛かったから。つい…な」
「昨日も…した?」
私の質問に侑士は妖しく笑っただけだった。それでも私には十分で恥ずかしくて恥ずかしくて熱が沸き上がってくる。
「よしよし」
私の頭を撫でながら目の前の満足そうに笑う侑士が憎たらしい。
「……ん……たい……」
「ん?」
「変態!!」
言い放った後、侑士の腕の中から抜け出してバタバタと部屋を出た。みんなを起こしてしまうとか考える余裕なんかなくて大声で叫んだ。侑士がクックッと笑ってた気がする。
顔が熱くて頭が痺れて胸がドキドキしてる。何これ。何でこうなんの。侑士は何考えてんの。考えても答えは出ない。今、分かるのはただ一つ。侑士とキスしたって事。
← →
戻る