トランプの途中、おばちゃんに呼ばれてみんなでご飯を食べた。
人数の多い食卓はそれはもう賑やか。
いつもの光景だけど、相変わらず楽しい。
遊びに来たらそのまま泊まるなんて最早常識で、ご飯の後は順番に風呂に入る。
約一名のせいで私の身が危険だから私は家に帰って風呂に入るけど。

明日の準備まで済ませて岳兄の部屋に戻ると既に布団が敷かれてて、ジャージに着替えたみんなが何かの話題で盛り上がっていた。


「侑士ってマジ最低だよなー」

「さすがにそれはマズいですよ。忍足さん」


侑士を白い目で見る岳兄とピヨ。
我関せずと布団に入って雑誌を読む亮と亮の脇で傍観する長太郎。何となく話が分かる。


「また侑士の女絡み?」


そう言って岳兄の隣に座ると「クソクソ!!侑士!!」って岳兄が悔しがってる。
侑士はモテるらしくて今まで女の話題が絶えた事はない。
確かに私も初めて侑士に会った時カッコイイと思った。
でもいろんな話を聞く内に、私の中でただのタラシと化したんだけど。
実際、足の綺麗な子が好きとか変態チックだし。
優しいのも良い奴なのも知ってるけど、軟派な奴は好きじゃない。


「で、今度は何の話?」

「今度はってな」
「元カノの話でよー」

「がく」
「ヒドいんだよ」


侑士の言葉は岳兄とピヨにことごとく遮られる。同情はしないけど。


「可愛かったのに何で別れたか聞いたら」

「一緒に寝てて違う女の名前呼んだんだと。忍足さんもアホですよね」

「…………は?」

「寝言やってん…」


つまりは、彼女の前で違う女の名前を呼んで、それが元で別れたって事か。後ろから亮の「激ダサ」と呟く声と長太郎の苦笑いが聞こえる。うん。本当、激ダサ。


「それで修羅場って最終的にさよならした訳だ」

「まぁ、そういう事やな」

「普通に最低だよね」

「だから寝言やったって言ったやん」

「いやいや、そういう問題じゃないから」


隣の岳兄とピヨがうんうんと頷いている。本当ありえないね。女の敵。寝言だろうと何だろうと彼女である自分以外の女の名前なんて呼ばれたら面白い訳ないじゃない。


「もうそんな失敗はせぇへんもん!」

「もんじゃねぇよ!取っ替え引っ替えして遊んでるから悪いんだよ」

「してへんわ!メッチャ一筋やで」


全く説得力がない。一筋って言うのは、他の人なんかに目もくれず一人の人だけを思ってるって事じゃないの?侑士からは知り合ってから今まで何人の女の名前を聞いたっけかな。今の彼女は何人目の彼女だっけかな。


「はぁ…何でこんな奴が取っ替え引っ替えで、岳兄とピヨと亮には彼女居ないんだろうね」

「だから違」
「岳兄は可愛いし、亮は硬派だしピヨはツンデレなのに」


「可愛いって言うな!」
「ツンデレって何だよ!」


岳兄とピヨがそれぞれ文句を言ってる。亮は黙って赤くなってるし。思わず笑ってしまった。

その後しばらく亮と長太郎を除いた四人で言い合いが続いた。
毎日一緒に居るのに話題が尽きなくて楽しい時間を過ごせるのって凄い気がする。


「なぁ…そろそろ寝ようぜ」


雑誌を読み終わったのか亮が切り出した。みんなきっかけを待っていたかのように返事をして、一斉に布団に入った。
亮が端っこに寝て、その隣に長太郎、ピヨ、岳兄、侑士と並んで、って…。


「私の場所は!?」

「えー自分の家で寝ろよ」

「岳兄ひどい…」


自分の家で寝ろなんて今更過ぎる。いつも一緒に寝てるのに!
今日は五人が敷かれた布団一杯に寝てるから私の入る場所がない。もうちょっと詰めてくれたって良いじゃん!


「しゃーないな…おいで」


目の前には布団を捲って腕枕をする体制になっている侑士。実に爽やかな笑顔だ。


「何する気!?」

「何でやねん!!」

「良かったじゃねぇか名前」

「ちょっと亮!」


寝てないとは思ってたけど、みんな自分の陣地を守るのに必死で私をスルーしてたんだ。きっと。
それを考えると陣地に迎え入れてくれる侑士に感謝しなくちゃいけない。


「はぁ…ま、いっか」

「何やねん。それ」


この際背に腹はかえられないと言うか、いい加減眠い。渋々背を向ける岳兄と侑士の間に入った。


「ええ子やな。おやすみ」

「おやすみー」


そういえば、いつもは誰よりも早く私が端っこ陣取ってるんだった。今日は話に夢中になって出遅れたんだ。
こんな事を考えながら段々睡魔に襲われて薄れていく意識の中で最後に考えたのは、案外悪くない、堅い枕の事。




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