何気ない毎日。いつもと同じ学校からの帰り道。
携帯の着信音が鳴った。


「はいはーい!」

≪よぅ!お前今日も来るだろ?≫

「行くけど…何?」

≪何か買ってきてくれよ食い物!≫

「何かってな」
≪んじゃ頼むな!ッブ、プーップーッ≫

「……」


既に切れている携帯を片手に溜め息を吐く。
でもこんなの日常茶飯事である。

岳兄こと、向日岳人。
隣の家の二つ年上のお兄ちゃん。いわゆる幼なじみ。
一人っ子の私にとって正に恰好の遊び相手だった。
岳兄の家に行くのは小さい頃からの日課で、今もそれは変わってない。
唯一変わった事があるとしたら、岳兄が中学に上がってから部活の友達も来るようになったって事。それくらい。


「おばちゃん、ただいまー!」


岳兄の家に上がり声を掛けて慣れた足取りで部屋へと向かう。
幼い頃から通っている岳兄の家は最早我が家同然。
階段を上がってすぐ右側の部屋。ドアを開ければ見慣れたメンバーの顔が目に入った。


「おらよ!買ってきてやったよ」

「お、サンキュー!」

「岳兄の為に唐揚げも買ってきたよ」

「マジ!?愛してるぜ名前ー」

「…きしょい」

「なんや…いちゃつかんといてぇな」


岳兄とのやり取りを見て真っ先に声を掛けてきたのは岳兄の親友、忍足侑士伊達眼鏡の変態。


「なんだ…侑士も来たんだ」

「冷たいなぁ…俺達の仲やろ?今更やん」

「どんな仲だよ…誤解を招く発言は止めてよね」

「今日も足…綺麗やで」

「素できもい」

「まぁまぁ名前、落ち着いて?」


そう言って爽やかに微笑むのは岳兄の一つ後輩の鳳長太郎。


「ねっ?」

「長太郎は癒しの神だよ…」

「やらせとけよ長太郎。いつもの事なんだからよ」

「亮!せっかく癒されてるのにちょっかい出さないでよ!」


彼は宍戸亮。すごく硬派で照れ屋。からかうと面白いんだよね。


「はぁ…溜め息しか出ませんね」

「ピヨまでそんな事言わないでよー」

「ピヨって呼ぶな」


ピヨもとい、日吉若。長太郎と同じ岳兄の一つ後輩。ちょと素っ気ないけど実はすごく仲間思い。
みんな岳兄のテニス部の仲間。個性豊かな面々である。
みんなは私ともすごく仲良くしてくれてもう家族みたいな存在。
どうしてもセーラー服が着てみたくて岳兄達とは違う学校に入ったけどこうやって毎日会える。


「あれ?ジローちゃんは?」

「途中から見てねぇな。どっかで寝てるだろ」

「えー!どっかって!亮しっかり連れてきてよー!ジローちゃんと長太郎Wで癒されたかったのにぃ!」


今話に出たのは居眠り王子こと、芥川慈郎。通称ジローちゃん。彼もまた癒しの神。


「ほな俺が」
「黙れ変態」

「癒し」
「うるさい」

「……俺にだけメッチャ冷たいやん」

「激ダサ」

「ふっ…忍足さん惨めですね。下剋上だ」


こんな馬鹿馬鹿しいやり取りだっていつもの事。


「それより!何かしようぜ!」

「それよりって…酷いわ岳人…」

「いいね!何する!?」

「とりあえず、トランプでもどうですか?」

「長太郎に賛成ー!」


こうやって私達は集まっては遊んで毎日を過ごしている。
これからもこんな毎日がずっと続くと良いのにな。




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