名前の携帯が鳴って、出ろと言ったのはそれが電話で、名前の家の者からかかってきたと思ったからだ。正直、邪魔されて腹が立ったし無視する事も出来た訳だが心配してかけてきているのだろうからとそれをしなかった。名前の携帯には俺と家しか登録されていなかったはずだ。だからそう思った。それなのに、何故名前は電話に出ない。携帯は未だ名前の手の中で鳴り続けている。


「何をしてる。早く出ろ」

「……っ」


携帯から俺へと名前は視線を向けた。出てただ一言、俺の家に居ると言えば良いだけの話だ。ただそれだけなのに電話に出る事を渋る理由は何だ。


「名前…っ」


何で出ないんだ?そう言い掛けて止めた。普通に考えれば分かるじゃねぇか。俺が居るから出られねぇんだ。電話の相手が家の者ではないから、俺には知られたくないから。もしくは電話の相手に俺と一緒だという事を知られたくないのだろう。だとしたら電話の相手はきっと名前を変えた人物。そいつしか居ない。そう、俺は直感した。


「貸せ!」

「あっ…!止めっ」


名前の手から携帯を奪い取ってディスプレイを見る。瞬間、俺は目を疑った。


「…仁王…雅治…」


それが見知った名前だったからだ。立海テニス部レギュラーである男の名前。そういや、名前に電話をした時後ろからボールを打つ音が聞こえた。テニスコートの近くに居るとは思ったがその理由が分からなかった。俺が行くと言ったのにそれを断って、走って息を切らして…。あぁ、そういう事か。
あの時名前はテニスコートに居たんだ。仁王雅治と一緒に。だから俺が行くと言ったのにそれを断った。奴に俺との関係を知られたくなかったんだ。
そう俺が理解した時、携帯の音が止んでそれと同時に名前は俺の手から携帯を奪い取った。名前は携帯を握りしめて俺を睨んでいる。


「何だよ」


そう言うと名前は更に眉を寄せて俺を睨んでから視線を伏せた。


「景吾」

「あーん?」

「ごめん」

「…名前」


名前はゆっくりと伏せていた視線を俺に向けた。その瞳はひどく悲しそうだった。


「私が側に居て欲しいと思うのは景吾じゃないの」


そう言って名前は部屋を出て行った。なぁ名前。やっと全てが繋がったぜ。そんな気がする。名前の気持ちは良く分かった。けどなこのまま引き下がるつもりはねぇんだよ。俺は名前を愛してるんだから。
追う事もせず俺はドカリとソファーに腰かけて呟いた。


「面白れぇじゃねぇの」


名前は誰にも渡さねぇよ。




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