好きな子に電話をした。そしたらその子は電話に出んかった。出なかった理由なんて分からん。出てくれる。なんて妙な自信のせいでショックでかかってくるかも。なんてかかってくるのを待って寝れんかった。
あ、これ俺の話。…って乙女か。俺。
お陰で寝不足。かなりダルい。それでもそんな体を引きずって朝練に来た俺は偉い。いやいや習慣って怖い。


「今日はいつにも増してダルそうですね。仁王君」


朝練が終わった部室で着替えながら柳生が声をかけてきた。さすが柳生。俺のパートナー。いつも通りにしてたつもりなのに気付かれてしまうなんて。


「柳生…俺、乙女になってしまったんじゃけどどうしたら良い?」


俺の言葉に柳生は一瞬顔をしかめ、その後何を思ったのかフッ、と笑って「そうですか」と言った。きっと意味が分ったんじゃろう。「それもまた一興です」と続けた柳生はどこか嬉しそうだった。どうしたら良い?に対する答えはもらっていないのに何となく気が楽になって「そんなもんかの。ありがとさん」と柳生に伝えて部室を出た。
俺が教えてやる。お前さんの分からん事全部。なんて名前に言っとったけど、俺も名前から色んな事を教えてもらっとる。主に気持ち的なとこ。こんな事になるなんてあの頃の俺は思っとったんじゃろうか。いや、思ってなかった。こんな気持ちになるなんて思ってなかった。


「ま、雅治…おはよ」

「ん、おはようさん」


登校してきた生徒で賑わう昇降口には名前の姿もあった。素っ気なく挨拶を返したけどホントは先に挨拶をしてくれた事が嬉しくて嬉しくてさっきまでのショックを受けてた俺はどこに行ったんじゃって感じ。


「昨日は電話…ごめんね。あの、寝ちゃってて…ホントごめん」

「ええんよ。気にしなさんな」


ポンポンと頭を叩けば名前は申し訳なさそうに笑ってみせた。ただ少し触れただけでドキドキするなんて病気みたいじゃ。余裕なんてどこにもありはしない。じゃけど、名前の前では少しでもカッコ良くありたい。だからショックで寝れんかったとかかかってくるの待ってたとか冗談でも絶対言わん。


「教室行くか」

「うん!」


寝不足でダルいのは確か。確かなのに、名前と歩く教室までの足取りは信じられないくらい軽やかじゃった。




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