ずっとずっと雅治の事を考えていた。二日とも途中で帰ってしまったという事と雅治の声に振り返らなかった罪悪感。
景吾の腕に触れたのはあの時の雅治とリンクしたから。
首元に回された腕、背中から伝わる熱。あの時と同じ。


「あん時何してたんだよ」


すぐ近くに景吾の顔があるせいか今日はやけに景吾の声が耳に響く。


「帰ろうと…してたとこ」

「車は呼ばなかったのか?」

「あっ…歩きたい、気分で」

「そうか」


そう言うと景吾は腕にギュッと力を込めた。この気持ちは何なんだろう。温かいのに胸が締め付けられるような。


「名前…」


景吾は私を向き合わせてそっと口付けた。
目の前に居るのは確かに景吾。嗅ぎ慣れた景吾の匂いが鼻を掠める。いつもと同じ苦痛な時間が始まるはずなのに頭の中で雅治が消えなくて体がジリジリと熱を帯びていく。




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