車の中で名前はただ無言だった。いつものような冷めた目で前を見て今思えば俺達はまともに会話を交わした事が無いかもしれねぇ。いや、…無い。
名前がするのは返事だけだ。俺が話しかけた時に。
名前が自己を主張する事なんかなくてただ黙って側に居た。呼べば必ず側に来た。俺はそれで良かった。良かったはずなんだ。今だって同じなのに今朝、初めて見た名前が俺を煽るんだ。
名前の全てが知りたい。名前の全てが欲しい。


「先に部屋行ってろ」


車を降りて名前に告げると頷いて名前は俺に背を向け歩き出した。そんな名前の背中を見つめながら電話をかける。


≪もしもし。どないしたん?≫

「あぁ、忍足か?悪いが今日は休む」

≪…分かったわ。まぁ、頑張りや≫

「アーン?何をだ」

≪何でもあらへん。ほなな≫


そう言って忍足は電話を切った。意味分かんねぇ事言いやがって…。何を頑張るんだよ。
少し苛つきながら部屋に入ると名前は窓際に立ってただ外を眺めていた。夕日を浴びた名前は綺麗でただ朝とは違ってどこか憂いを帯びてるようで思わず後ろから抱き締めていた。


「名前…」

「!」


名前は一瞬ビクついたが次の瞬間そっと俺の腕に触れた。名前が触れてる腕が熱い。その熱は全身へと伝わってきて胸が締め付けられる。さっきまで渦巻いていた黒い感情とは違う何かが俺を襲う。苦しい。でも名前…もっと俺に触れろ。




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