なぁ、名前。詮索すんのもされんのも好きじゃないんじゃけど名前が慌てた理由とか慌てる程の用事ってどんな用事だったんかとか聞いてもええ?訳も分からんし、引き留めても振り返らん名前の背中を見つめるのはもう嫌だと思ったから。何となくでもその行動の予想がつけば気持ち違うと思うけぇ。だから…。


「帰られたんですか?苗字さん」

「柳生…」


名前が走っていった方向から視線を後ろに向けるとそこにはいつの間にか柳生が立っていた。


「何かあったんかのぅ…」

「気になりますか?」

「当たり前じゃろ」


名前の一挙一動が気になってしょうがない。赤也と話してたのを見た時だって名前が赤也に笑いかけて、赤也が名前に本気で惚れて名前をとられたらどうしようとか思ったし。俺のモンじゃないけど名前を独り占めしたいと思ってしまった訳で。


「良かったです」

「んっ?」


柳生は何だか満足そうに笑っとった。それを見たら、俺が気持ちに気付いたって事に対しての言葉だって思った。


「ありがとさん。親友」

「礼には及びません」


柳生に言われなかったら名前に抱いた気持ちが恋だと気付かずに悶々と毎日を過ごす事になったかもしれん。


「んじゃ、ちょっと釘刺してくるかの」


柳生の肩をポンポンと叩いて歩き出すと「程々に」と言って苦笑いしていた。俺は名前を好きだから手を出すなとか言うか?そしたらまたらしくないって言われるかの。自分の気持ちを口にする俺なんて。でも、らしくなくても構わん。それだけ名前に惚れてしまっとるんじゃから。




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