私はあの後、体育館裏へと連れてこられていた。面倒臭かったけど断って何回も呼び出されるよりマシだと思ったから黙ってついて来た。


「で、いきなり何な訳?」


体育館裏に着くなり投げかけられた言葉。そっくりそのまま返したい。いきなり呼び出されたのは私の方なんだから。
黙っていると「チッ」と舌打ちをしたが女はすぐにニヤリと笑った。


「婚約者が居るのに仁王君と仲良くするなんて、良いご身分ね」

「あ?」


婚約者、という言葉に思わず眉を寄せた。だって景吾と婚約している事は公表されていないし、誰かに話した事だってないのだから。


「へ〜。やっぱり居るんだぁ」


私の様子を見た女達は益々ニヤついていた。どうやらカマをかけられたらしい。


「婚約者が居るのに他の男に手を出すなんて最低ー」

「仁王君が可哀想」

「こんな女に遊ばれてさー。今まで大人しくしてたくせに」


手を出す?可哀想?遊ぶ?


「だから、何?」

「はぁ!?仁王君に近付くんじゃねぇって言ってんだよ!!」


雅治に近付くな?意味が分からない。一緒に居たいだけなのに何でこんな事を言われなければいけないんだろう。
あぁ…嫉妬ってやつ?あの時の女達と私を見る目が一緒だ。本当に面倒臭い。私には無縁で訳が分からない事ばかりだし、どうすれば良いのかと溜め息をついた時だった。
それが癪に障ったのか一人の女が胸ぐらを掴んで私を壁に押し付けた。


「……っ何すんだよ」

「目障りなんだよ」

「は?」

「お嬢様だか何だか知らないけどお高く止まっちゃってさ」


本当に意味分からない。自分の意見をぶつけて相手を傷付ける。嫉妬ってやつはこんなにも醜いものなのか。


「私は雅治と一緒に居たいから一緒に居る。アンタ達が何を言おうがそれは変わらない」

「っマジでムカつく!」


雅治と離れるぐらいなら何を言われても平気。少し前の私なら簡単に身を引いたかもしれないけど今の私には雅治が必要だから。




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