名前と話してると何で温かい気持ちになるんじゃろ。
「なぁ、名前。今日も部活見にこん?」
「うん。行く」
名前の素直な反応が嬉しかった。
「よしよし。じゃ、放課後空けときんしゃい」
楽しませたい、笑顔を見たいっていうのは大前提ありつつもただ近くに居って欲しいって気持ちが先行してて本当にこんな気持ちになったのは初めてじゃ。これが好きって気持ちなんじゃろうか。
今まで告られたらただなんとなく付き合ったりしとって、一緒に居る内に「コイツの事、好きなんかなぁ」って思った事はあったけど、今名前を思ってるみたいな気持ちになった事はなくて自分で気付かなかったのも無理はないかもしれん。
独占欲。きっとこれが赤也の言葉に苛立った理由。
別に俺のもんではないが、俺だけに本当の名前を見せて欲しいとか少なからず思ったから。
もしかしたら優越感に浸りたいっていう自分勝手な気持ちかもしれんけど好きって気持ちからきてるなら、これは俺にとって本気の恋。初めてのな。
「さて食堂でも行くか。昼じゃ」
名前と話している内に授業は終わっていて俺はそう言って立ち上がった。
「ほれ。名前も行くぞ。飯」
「あ、うん」
手を差し出すと名前はその手を取って立ち上がった。名前の手は相変わらず小さくてぎゅっと握って歩き出す。
「ねぇ。何で手繋ぐの?」
「繋ぎたいからじゃよ。それ以外の理由はなか」
アドレスを聞いたのも名前を寂しくさせない為とか言っといて、実際は名前と繋がっていたいって思ったから。俺ってかなり欲望に忠実なんじゃな。これも名前を好きだからって事なんかな。
「雅治ってやっぱり変な奴」
「何とでも言いんしゃい」
いつか…いつか名前も俺と同じ気持ちになってくれんじゃろうか。お互いの気持ちが通じたからってどうなるかとか分からんけど。
今、この笑顔を独り占めしたいと思った。
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