名前が俺に何かを言ってきたのは初めてだった。
「今日はこのまま休むぞ」
「えっ?」
このまま名前を抱き締めていたいという衝動に駆られたから。ただ、それだけ。でもそれに名前は同意しなかった。
「私…学校、行きたいんだけど」
「何だと?」
いつもなら俺の言った事には何も言わずに頷くだけなのに。
「何でだ?」
「…行きたいから」
「理由になってねぇよ」
理由になってねぇと言うか、学校行くのが普通なんだが名前がこんな事を言うのは初めてで思わず聞いた。
「行きたいの」
「…まぁ良い。送ってやるから準備しな」
あの時の名前の目はいつもみたいに冷めてなかった。光があったと言うか何と言うかとにかくいつもと違っていた。
何が名前をそうさせた?学校で何かあったのか?
「ふぅ」
「なんや。溜め息なんて跡部らしないなぁ」
「アン?うるせぇ」
名前は自分の事なんて話さねぇ。学校が違うから学校でどんな風に過ごしてるかなんて分からねぇ。納得、いかねぇな。
「おい、忍足。今日、先に部活始めてろ」
名前は俺様のものだろ?俺の知らないところで変わるなんて許さねぇよ。俺が名前の道なんだからな。
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