「気付いていますか?自分の気持ちに」


柳生の言葉が何度も何度も問い掛ける。気付くって何じゃ?俺は名前に興味を持って笑顔が可愛くてもっと笑って欲しくて赤也の言葉に苛立って帰り際の表情が気になって名前が居なくて寂しくて…。
あぁ…名前は何しとるんじゃろな。考えたらまたダルくなってきたぜよ。
そんな事を思いながら屋上の扉を開けると心地良い風が吹き抜けた。そういえば昨日もこんな風じゃったな。そしてこの匂いも。
風が運んできた匂いには確かに覚えがあった。自然と足があの場所へ向かう。


「…名前」


そこには昨日と同じように名前が居て驚いた表情で俺を見上げた。


「まさ、はる」

「またサボりか?悪い奴じゃ」

「…雅治もじゃん」

「はは!そうじゃった」


隣に座ると名前は俺を見てフッと笑った。


「私ね、雅治の事考えてたんだ。だからビックリした」


俺の事を考えとった?正直…かなり嬉しい。今、顔にやけとらんじゃろか。
柳生…俺、気付いた。これって恋ってやつじゃなか?
俺、名前の事が好きなんよ。恋に落ちとったんじゃ。昨日、この場所で。
そうか。そうなんか。俺は、名前が好きじゃ。




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