次の授業が終われば昼。相変わらず気持ちは落ち着かんままで、名前は居らんしダルくなって俺はサボる為に屋上に向かっとった。


「仁王君」


廊下を歩いてたら後ろから呼び止められた。この声は。


「やぎゅー…」


思った通り声の主は柳生。足を止め柳生の方に向き直った。何の用じゃろ。


「あまり授業をサボるのは良くありませんよ」

「ええじゃろ。ダルいんじゃ」


そんな事を言う為に呼び止めたんじゃろうか?俺のパートナーは本当、真面目じゃな。すると柳生はフゥと溜め息をついて「何をそんなに苛立っているのですか?」と一言。
その言葉に思わずピクリと反応した。


「朝から…いや、昨日からですね」

「…お前さんには敵わん」

「原因は苗字さん…でしょうか」


原因が名前…?確かにそうじゃが、そんなに俺は分かり易かったのか?柳生はその気持ちを察したように言った。


「皆さんも仁王君が苛立っているとは言っていましたが、原因までは分からないようでした。幸村君と柳君は別ですがね」


柳生は淡々と続けた。


「あのように女性に接する仁王君は初めて見ました。彼女はどのような存在なのです?」


どのような存在?何でそんな事を聞くんじゃ。


「…ただ、興味を持っただけじゃよ。いろんな顔するけ。面白い。もうよか?」


それ以上詮索されたくなくて屋上に向かって足を進めた。
後ろでまた柳生が溜め息をついちょった。


「気付いていますか?自分の気持ちに」


柳生のその言葉はまるで諭すような言い方。俺は歩いたまま、ヒラヒラと手を振った。
んじゃ柳生は気付いとるんか?幸村も参謀も俺のこの気持ちに。
こんな気持ちは初めてなんよ。今、名前を思うこんな気持ちは。




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