「んっ…」
体に違和感があって目を覚ますと目の前に景吾の顔があった。ぼんやりとした頭で今、景吾の腕の中に居るのだと理解した。
私は昨日、意識を手放してそのまま寝てしまったらしい。窓から差し込む光に目を細めながら時計を見れば学校はとっくに始まっている時間だった。どうせ遅刻だし急ぐ必要はないんだけどとりあえずシャワーを浴びたくてそっと景吾の腕の中から抜け出した。
「いっ」
何だか体中が痛い。少し動くだけでもかなりの衝撃が走る。でも原因はすぐに分かった。昨日、やった事もないテニスをしたせいだ。夢じゃなかったんだ…。
体は痛いけどそう思うと温かい気持ちになった。
その時、強く腕を引かれ私はの体はベッドに戻された。
「け、いご…」
「どうせならもっとゆっくりしてろ」
景吾はそう言って私を腕の中に収めた。
「…良い夢でもみたか?」
「えっ…」
「さっき嬉しそうな顔してたぜ」
景吾はいつから起きていたのだろう。起きたなら普通に声を掛けてくれれば良いのに…。でも、私そんな顔してたんだ。
「まぁ…そんな感じ…」
一言答えると景吾はフッと笑った。そういえば雅治の腕の中、温かかったな…。
隣に居るのは紛れもなく景吾なのに腕の中で感じたのは雅治の…温もりだった。
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