雅治と別れた後すぐに車を呼んだ。あんなに楽しかった時間が嘘のように私は現実に引き戻されていた。結局、私には決められた道しかないって事。
メールの差出人はそれを理解させるのに十分過ぎる相手。一旦、家に帰って準備をした私はその相手の家へ向かった。


「お待ちしておりました。名前様」

「こんばんは」


荷物を持って案内しようとするこの家の使用人に断りを入れて慣れた足取りであの人の部屋へと向かう。迷いそうなぐらい広い家。でも迷わないくらいに私はここに来ていた。部屋の前に着きノックをしようと手を上げる。出来れば今すぐ帰りたい。でもそれは出来ない。そんな葛藤が私の手を止めた。葛藤だなんて…今更…。私は自嘲気味に笑った。これは雅治との時間が楽しかったせい?
その時、私はある事に気付く。


「あぁん…ぁあっ」

「ほら。もっと鳴けよ」


私の目の前の部屋から漏れる女の甘い声。意識が違うところにいっていたせいか気付かなかった。いつもの事なのに。私を呼ぶ時は大抵これだから。
溜め息を吐き私はその場を離れた。ふらふらと歩いて向かう先は中庭。中庭で一人、あの人が迎えに来るのを待つ。これもいつもの事。
どうしてこんな時、私を呼ぶんだろう。毎回の事ながら疑問に思う。でも聞こうとは思わない。聞いたところで意味を持たないしあの人が何をしようが私には関係ない。私はただあの人の側に居れば良い。それが決められた道。
どれくらい時間が経っただろう。今日はやけにいろんな事が頭に浮かぶな…。考えたってどうにもならないのに。きっとそろそろあの人が来る。


「おい。名前」


ほらね。




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