「次は失敗せん」


雅治はニヤリと笑って私の腕を掴むとテニスコート内へ引っ張った。


「な、何!?」

「ほれ」


手渡されたのはテニスのラケット。


「体動かすのは楽しいぜよ」

「やったこ」
「ボール出すけぇ。当てれば良いんじゃ」

「ちょっと!強引なんじゃ…わっ!」


雅治が前に屈んでいきなりボールを投げてきたから思い切り空振った。


「ははっ!ほれ!」

「ちょっと!」


雅治は次から次へとボールを投げてくる。


「ラケットもっと下持ちんしゃい。右に投げるぜよ」


いつの間にかボールを打つのに夢中になっていた。まるで無邪気な子供みたい。なんだがすごく楽しい。


「ハァ…ハァ…」


かなりの運動不足だったらしい。大して動いた訳ではないのに肩で息をしている。


「素質あるのぅ」

「ハァ…疲れたよ…でも…」


すごく清々しい。こんな気分初めてかもしれない。


「楽しかったか?」

「…楽しかった」


本当初めて。初めての事ばっかり。全部雅治が教えてくれた。今日初めて話したのに。


「雅治…本当にありがとう」




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