放課後、雅治の後ろをついて歩く。人の居ない教室。部活動の練習風景。どこからか微かに聞こえる話し声。私には全て新鮮だった。
いつもなら学校が終わる頃には迎えの車が来てすぐ家に帰って広い部屋でただ一人時間が過ぎるのを待っていたから。
あの後私は電話をした。今日は迎えにくる必要が無い事を伝える為に。雅治との約束があったから。


「着いたぜよ」


雅治の言葉で辺りを見渡した。


「テニスコート…?何でテニスコート?」

「何でって…俺、部活じゃし?」

「はぁ?」


じゃぁ、何しに連れてきたんだという疑問が私を襲う。それを察したのか見抜いたのか
「面白いけぇ。まぁここに居りんしゃい」と雅治は私を促した。


「居てどうすんの?」

「見てれば良いんじゃ」

「はぁ?」


見てれば良いって練習を?何の為に?またもや私は疑問に襲われた。雅治って本当に訳が分からない。


「困った顔しとるのぅ。んじゃ着替えてくるけぇ」


雅治は満足そうに笑うと私を置いて行ってしまった。一体どうすりゃ良いんだよ。
途方に暮れながらもとりあえずこの場所に居ることにした。




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