考え事をしてる内に授業が終わったなんて初めてだった。今まではただ窓の外を見て時間が過ぎるのを待っていたのに。
「ねぇー雅治ー」
「まーさー!」
授業が終わるなり雅治の元に集まる女子。どう言う事か違うクラスからも来ているようだ。甘えるような声で雅治を呼ぶ。私には到底出来ない。なんて、周りに意識がいってる時点で私はやっぱり私ではなくなっている。
「何で苗字さんと一緒だった訳〜?」
「そー!何で〜?」
「どうせなら私達呼んでよ!まさの為なら何でもするのにぃ」
あの時、二人で遅れて教室に入ってきた時の事を言ってるんだろう。同じクラスの子はともかく何で他のクラスの子までそれを知っているのか。どうでも、良いけど。
雅治の周りの女子は話しながら私を睨んでる。普段なら全く意識なんてしないくせにね。なんか面倒臭い。視線が、正直ウザい。
「女の嫉妬は怖いのぅ」
雅治はチラッと私を見ると笑った。まるで「これは嫉妬って言うんじゃよ」と言いたげに。
「何も無かよ。ただ偶然一緒なったけぇ、話しただけじゃ。もういいじゃろ。行きんしゃい」
そう言って雅治は周りをかわすと私の席へ近付いてきた。
「何?」
「面倒臭かったじゃろ?顔に出とったよ」
「まぁ確かに。でも雅治がこっちに来るとまた面倒臭くなる」
「そん時は俺が何とかするけぇ」
何とか、か。面倒臭くなるぐらいなら一人でつまらない毎日の方が良かったんじゃないかと思う。私には誰かに関わる事で起こる事態の予測は出来ない。誰かに関わる事なんてしなかったから。
「お前さん、今日放課後残りんしゃい」
雅治の言葉で私は考え事を一時中断した。
「は?何で?」
「楽しい事あるけぇ」
「楽しい、事?」
「約束じゃ」
雅治はそう言い残し私の元を離れていった。そんな雅治の後ろ姿を見ながら私は思った。全ては好奇心だったのかもしれない。きっと屋上で話したあの時から雅治への好奇心で一杯だったんだ。掴み所のない変な奴に。
だとしたら答えは決まってる。もう一人には戻れない。
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