人の温もりを初めて知った。そんな気がした。
仁王の言葉も腕の中も温かくてただただ不思議な感覚に陥ってた。今まで感じた事のない、感覚。
「名前」
初めて、そしていきなり名前を呼ばれて少しドキリとした。
仁王は私を腕から解放し椅子に座らせた。
「俺が教えてやる」
「何い」
「お前さんが分からん事全部じゃ」
私の言葉を遮って仁王は続ける。私はただ疑問符を浮かべるばかり。
「もう一人じゃなか。俺が居る」
こいつ本当に何言ってんだろ。教えてやる。俺が居る。どういう意味?何をしようっていうの。
「アンタ」
「雅治」
「えっ…」
「雅治じゃ。名前」
「まさ、はる」
その時の仁王の顔がとても優しくて、また不思議な感覚に陥った。
「俺についてくるか?」
どんな誘い文句なんだよ。と心の中で悪態を付いた。意味が分からないし。
だけど雅治の真剣な瞳に私はただ頷いていた。
← →
戻る